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建築家 天野 彰 老いの国・老いの時代・老いの生活の家づくり

【1】構造補強・家具が倒れないそれどころか人を救う 命を守るべき家が守ったか?

東日本大震災以来、あちこちで地震の揺れが人々を驚かしています。阪神大地震のあの都市の悲惨な震災からあっという間に16年が過ぎ去りました。その後の驚くべき大地震と大津波でした。あの大津波は不可抗力としても、阪神での貴重な教訓は生かされていたのでしょうか?

東日本大震災 被害を受けた建物
東日本大震災 被害を受けた建物

一時期その発生が懸念されていた東海地震や東南海・南海地震について、政府の中央防災会議(当時小泉純一郎会長)がその規模は桁違いのもので、しかも明日来てもおかしくないものだと言っていたのです。それがなんと宮城沖どころか三陸沖全体の東日本大震災の大災害となってしまったのです。しかも東海地震とは全く別のところでした。従って東海関連の大地震の確率はまだまだ高いままなのです。

阪神淡路大地震直後、現地を見て書き下ろした拙著「地震に勝つ家負ける家」(山海堂)を題材に、その10年目を記念して2005年2月20日TBS系TV番組『夢の扉』にて、「簡単にできる耐震リフォーム」について紹介されました。「2015年までに人の命を守る家々で街を埋めつくしたい」などと宣言したものでしたが、その反響は大きく多くの方々から耐震リフォーム相談を受けました。その阪神淡路大地震で被害を大きくしたとされる木造住宅の補強や室内の家具の転倒防止など簡単にできる耐震診断やリフォームなどを実例を示しながら展開するものでしたが、改めてちょっとの工夫や心がけ次第で倒壊から免れたり、家具に挟まれなくて済むことが分かりました。

古い家でも傾いたために古電柱でつっかいをしただけの家が無事に建っていたり、反対に新築でも一階の駐車場のために角の柱が折れて二階が落ちてしまった例など、改めて壁の位置など構造のバランスや無理な増築などが原因でした。

阪神大震災の柱一本で倒れた家
阪神大震災の柱一本で倒れた家

その辺りに壁を足したり、イラストのように2本の補強柱で抱くなどの構造補強で家は数倍強くなるのです。

柱3本で二階を支える
柱3本で二階を支える

造り付けの収納家具で助かった例

またマンションや賃貸アパートでも造り付けの収納家具で助かった例もあるのです。これが置き型の箪笥(たんす)などが倒れると避難を危うくするのです。<中越地震での室内の惨状>

イラストのように家具が転ぶためにはどちらか一辺が持ち上がらなければなりません。

写真:中越地震で家具の下敷きに(写真:天野 彰)
写真:中越地震で家具の下敷きに(写真:天野 彰)

天井までの家具は天井が持ち上がらない限り転ばないのです。そこで天井までの空間(隙間)を固い収納箱などをつくり、きっちりと嵌め込み一体型の収納にします。あの金具やつっぱり棒などで留められたタンス類ですが、あっさり外れたり天井にめり込んだりして倒れ、不幸にもそれらの家具の下敷きとなり逃げられず迫る猛火で焼死した人も多いのです。さあ、明日また大地震が来るかもしれません!何もなさらない人はくれぐれもタンスや冷蔵庫の脇では絶対に寝ないようにしましょう。

【2】老いの国・老いの時代・老いの生活の家づくり

迫りくる超高齢社会どころか、子どもの少ない“老いの国”のためになんら具体的な準備も無く、今まで奔放にやってきたことのまるで“ツケ”を穴埋めするような政策が・・・、今度の東日本大震災と原発事故のダブルパンチで民主、自民ともが、急きょ災害対策のために、消費税を上げるのは当然とばかりの感覚でいることに驚きます。“老いの時代”を統計学の好きな官僚たちが何十年も前から分かっていたことにもかかわらず、巨額の年金や郵便貯金そして簡易保険などの蓄積?の多くが、その都度の担当者による無責任な投融資で何処かに消えてしまったことを、誰あろう国民のほとんどが知っていて、特に今比較的豊かな老人方は皆先行きの不安を感じているのです。

セルフディフェンスの家
セルフディフェンスの家

近い将来破綻するであろう年金制度とますます負担が多くなる健康保険に“老いの生活”のためには増えることはない“タンス預金”に塩漬けにしているのです。こうしてわが国はますます金回りの少ない経済となって行くのです。

しかしこれは間違っているのです。確かに政策は愚かしいことばかりなのですが、いずれ大幅な増税で帳尻を合わそうとするのです。こうして“老いの生活”はますます暮らしにくくなるのです。そして大地震!さらには自身の突然の病や衰えから住みにくい家となるのですが、かと言って妻のためには処分もできません。残された妻は大きな家に一人で住むことになるのです・・・。

現実の住まいづくりのお手伝いをさせていただいていますと建て主の生活経済と苦難からこの不条理が如実に分かるのです。が、はたして時すでに遅し。となる例があまりにも多いのです。その結果、虎の子のタンス預金をはたき、今の家も処分して誰も知らない老人ホーム暮らしとなるのです。

【3】今こそ「セルフディフェンス」の家に!

皮肉にも、この先の生活や地震に不安を抱きながらも、老後を助けてくれるはずの家に思い切った“投資”もできないで来てしまったのです。もっと不幸なことは16年前の阪神大地震ではこうした老人が住む大きな家が倒れて多くの人が亡くなっていることです。情けないことに、もう一歩、そう前回もお話しした、僅か200万、300万円のちょっとした耐震強化リフォームだけでも助かったかも知れないのです。まさに“家への投資”で老後に安心で地震にも強い「セルフディフェンスの家」ができたはずでした。さらに悔やまれるべきは、子育てが終わって定年前後に思い切って家の半分を処分してでもイラストのような小さくとも外殻がコンクリートで中は無垢の木造の、災害に強くてしかも快適な家ができたかも知れないのです。またさらに頑張って貸しスペースのある家にして家賃収入を期待できたかも知れないのです。

殻鉄筋、内中庭式木造セルフディフェンスハウスイラスト:天野 彰
イラスト:殻鉄筋、内中庭式木造セルフディフェンスハウス(イラスト:天野 彰)

「セルフディフェンス」とは住まいだけではなく、自分自身の人生を守る考えでもあるのです。今からでも遅くはありません。土地さえあれば建て替えでもリフォームででも「セルフディフェンスの家」はできるのです。またその元気でいると離れて住んでいる子どもたちが一緒に住もうと言ってくるかもしれません。これもまた老後に安心な成り行きなのかも知れません。事実、この大震災直後から親子双方からの同居希望が増えていると言うのです。

【読者プレゼント付き!転ばぬ先の家づくり】

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転ばぬ先の家づくり
写真:拙著「転ばぬ先の家づくり」(天野彰著:祥文社刊)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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