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子育て上手の家 子どもにすべてが見える家にする
1 家は子供の最初で最大の教育現場
わが家の子育てのみならず皆が安心して子を育て、第2子3子まで産めて結果、大げさに言えば国家をも救うのですが、これに対して現実には子育てに親が口を出したり、孫に煩わしく思うこともあると言う意見もありました。しかし一世代離れた祖父母と住む子どもの情緒や活きた知識の形成、さらには働く親の安心など計り知れない良さがあることを考えるとチャンスがある限り考えてみる必要があると思うのです。家は子どもに住まい方を考え教える場です。
こうした同居家庭の中で生れ育ったか、住むところも誰もが生まれたとき何らかの家はあったはずです。それが親の建てたものか、あるいは知らない人が建てたものなのか、賃貸のアパートなのかいずれにせよ子どもがもの心が付いたときの初めての住まい体験となっているのです。教育がどう、学校がどうと、やっきになっている親もわが家でこうした住まいや住まい方について教えている人は少ないようです。実は、人間形成の最初で最大の教育現場であることを忘れてしまっているのではないでしょうか。ここが、頭はいいが、情緒と創意工夫がない現代人の大きな問題だと思うのです。
子どもに部屋を与えるのではなく場を与える
家はどんな形であろうと親の姿勢一つで住まいを教育の場にすることができるのです。家で机を与え、部屋を与え、しかも勉強を見てやれば子どもの教育だと勘違いしている親ごさんは多いようです。家は元来親が住むための「家」であり、家族の「住まい」でありそこに家庭があるのです。実は家そのもの、住まいそのものそして家庭が最大の教育の場なのです。従って親が働きに行く平日は子どもも保育園や学校に行き「社会」を学ぶのです。教育の現場や教師がすべてと思う現代の親そのものが家庭の先生になっていないのでは、と思うことが多いのです。
毎日の朝な夕なの生活、そして土日休日の家族との暮らし。料理、掃除、庭の手入れ、ペットの世話、祖父母親戚、親の友人との付き合い。これら礼儀作法に始まりその工夫や工面。ときに祝い事やいさかい、騒動などのあらゆる問題の喜怒哀楽のすべてが子どもの大きな人間形成に繋がっているのです。イラストのようにこれらがすべて見えるワンルームの体育館のような家こそが、子どもの真の教育現場となるのです。
家庭のすべてが見えるLDKに スケッチ 天野彰)
LDKワンルームのマンションリフォーム(A邸)(写真:天野彰)
2 オヤジデスクがオヤジの居る場を作る
親が子に朝な夕なの生活を見せ、人生の最重要な教育ができるのが住まいです。そのためにオープンな住まいがいいのです。まずオヤジが居る場をつくることです。オヤジデスクの誕生!私はLDKの真ん中に自分の書斎をつくり、と言ってもライティングビューロウのような造り付けの机と書棚ですが、そこをおもむろに開けると閉じられたデスクの中から仕事道具や趣味のものが出てくるのです。半畳ほどの幅の棚ですが、そこが大パノラマのようで子どもたちは目を輝かせながら親の所作の一つ一つを見ているのです。
第一に、たまに父親が家に居る時は必ずこの場に居て、書き物や仕事をすると言う、いつもオヤジが居る場となり、子どもたちは父親がすることのすべてに興味を持つようにもなるのです。私はこれをオヤジデスクと銘打ち多くの家のLDKにもつくりました。(イラストと写真:オヤジデスク)
イラスト オヤジデスク 画 天野彰
写真 壁面収納にオヤジデスク登場
その後家を建て、念願のわが書斎をつくりそこで原稿を書いたり音楽を聴いたりもしましたが、夏暑く冬寒くてなによりも寂しく、気が付いたら結局食卓に仕事道具を持ちこんでそこで作業をするようになっていたのです。
3 部屋のために1千万円の出費
今の家にもう一部屋創る?家づくりではどなたも子ども部屋を与えることに意識し、それを広くつくることに興味が行くようです。それは今まで狭い2LDKなどで、子ども部屋どころか子の居場所さえままならず、子どもがゆっくりと勉強できる部屋こそが家づくりの唯一の目的のようになってしまうからです。特に受験に近い兄と弟や兄妹のように性別が分かれると次第に別々に部屋を与えようとすることとなり、気が付いたら親の居場所どころか親の寝る場所もないような家となってしまうのです。これが2LDKのマンションであれば3LDKへと、もう一部屋を求めるようになるのです。これを実際に今住む近くのマンションに移ろうとすると…なんとたった六畳の一部屋増やすだけで一千万円以上ものプラスの出費となってしまうのです。なぜなら今までの古い家の目減りと、新しい少し広い家の割高な単価との差と、売り買いの処分と手続きの二重の経費が掛って差し引き額が大きくなるからです。
そこで今の2LDKの住まいを改めて見てみましょう。すると二つの六畳のうち一つに親夫婦がタンスなどの持ち物と一緒に狭苦しく住んでいます。もう一つは二人の子どもが煩雑にごちゃ混ぜで住んでいます。これでは確かに落ち着かず、プライバシーもありません。そこで今ある二段ベッドを思い切って部屋の真ん中に置いて上下をイラストのように互い違いにパネルで塞ぎます。これで上段はお兄ちゃん、下段は妹のベッドとし。仕切られた部屋?を互いのコーナーとするのです。これで兄弟の気配はあるまま、生活は区切られて案外落ちつくのです。なんと狭い!と思われますが、案外子どもたちはお気に入りで、囲まれてわが空間にわくわくしながら、じっくり勉強もするようになるのです。この工夫こそが親の生き方、生き様となり子どもたちに大きな影響を与えるのです。
子ども部屋を二段ベッドでテレコに仕切り二つの部屋にする(画:天野彰)
私は都市に住む以上絶対に逃れられない狭さの三すくみと言っているのです。
4 まず2LDKの家で6畳が親2人、あとの6畳に子1人の部屋は不公平?!
今の家や住まい方を身直してみましょう。なんと狭い!狭苦しそうです。2つある部屋に大の大人がタンスや整理棚などとともに重なり合うように寝て、隣の一部屋は子どもが勉強机を置いて、広々と大の字になって寝ているのです。なんとこれは不公平です。親たちは当然もっとゆったりした寝室やクローゼットが欲しくなります。しかしよく見ると2LDKの狭さが悪いのではなく、住まい方が悪いことが分かります。
今の2LDKの住まい方は親子不公平!タンス類の新しい壁で納戸と子ども部屋をつくる(画:天野彰)>
5 予算“0”で今の2LDKを3LDKの間取りにする?
冒頭にお話ししたように、今の住まいの間仕切りを溶かしてしまうのです。溶かすとは大げさですが、今の間取りを無視して自分たちが住まいやすいようにするのです。まず狭い6畳のタンス類に目を向けましょう。タンスの引き出しなど下の方の引き出しはベッドが邪魔して開けられません。そこで、今の子ども部屋に置かせてもらうのです。それもただ置くだけではなく、ちゃんとした子ども部屋をつくってあげるのです。まず机を窓際にきっちり置き、そこにベッドを置きます。今までのタンスや整理ダンスなどをベッド側に背をむけて並べます。天井までの隙間にはきっちりと日曜大工で造った箱などを噛まして地震などで倒れないようにします。
6畳の子供部屋を納戸と子ども部屋に(画:天野彰)>
今までの寝室の家具などで新しい“間仕切りの壁”をつくるのです。ここは子どもの通り道でありながら、住まいの小さな納戸となり、ラックなどを加えればクローゼットともなって、今までの狭い寝室は広く、新聞雑誌や物などの保管もできてLDKも広々とするのです。一方の子どもの側はタンスの背に自由にポスターを貼ったり、ペナントなどが飾れる展示壁になるのです。これで子どものプライベートなコーナーの完成です。当の子どもは今までの奔放な6畳が狭くなったどころかかえって落ち着き、「操縦席みたい!」と大はしゃぎです。
6 子どもが出かければ広いLDK、帰れば子どものコーナー
2LDKのLDKはベランダ側の子ども部屋のために暗く狭い
大体の2LDKのプランはベランダ側に個室が面し、寝室や子ども部屋のためにLDKが暗くなるのが一般的のようです。このLDKをベランダ側に持ってくる方が日中明るく過ごせるのですが、角部屋でもない限り後ろの寝室が暗く昼間も明け放す必要があるのです。反対にその個室のためにキッチンが前の方になり水回りが使いにくくもなるようです。第一この水回りの移動はマンションでは無理なのです。
今の子ども部屋の間仕切りを壊し広いLDKにする?
今の間取りや水回りはそのままにベランダ側を塞ぐ子ども部屋の壁を壊すだけで大きな、しかも明るいLDKにすることができるのです。それでは子ども部屋がなくなってしまうのでは?と思われるでしょうがさ、にあらずなのです。今の6畳ほどの子ども部屋の壁を壊しLDKと一体とするのです。なるほど広い!しかもベランダも見えて開放的で広々とします。しかも風も通ります。やはり子ども部屋がなくなった!?いや、あるのです。子ど部屋の壁を透明にするのです
今の2LDKの壁を透明にしたプラン(画:天野彰)>
まず6畳ほどの子ども部屋を半分ほどに縮めそこに子どものベッドと机を置きます。LDKはこの時点で平面的に3畳ほど広くなります。肝心の子ども部屋との仕切りは、まず3本ほどのガラスの引き戸で仕切ります。さらに子どもが寝るときはさらに暗幕のカーテンで閉めます。なるほどガラス戸で音も聞こえず。暗幕で光も通さない、これこそまさしく壁です。子ども部屋ですが、今度はカーテンを引けば姿が見え、さらにガラス戸を開ければさらに広々とします。壁を透明にして、これで子どもが学校などに出かければすべてを開放すれば見通しは広く風も通り、子ども部屋も清潔となるのです。
<イラスト:子ども部屋とLDKの間仕切りスケッチ(画:天野彰)>
透明な間仕切りの子ども部屋は集中力を高める?
こうした子ども部屋は次第にカーテンがなくても自然に勉強に集中できるようになるのです。ガラス戸もわざわざ閉めることなくそのまま宿題などもするようになるのです。子どももきっと寂しくなくてよいようです。こんなリビングのコーナーようなところで勉強に集中できるようになると、家族の一体感はもとより、もっと良いことがあります。そうです。どんなにざわざわしたところでも集中できるようになるのです。実際にいざ、試験場に入ると多くの受験生がいます。回りがざわざわしていても、日ごろからそんな環境の中で集中できる子どもはとても有利なのです。その反対に個室でしか勉強に集中できない子どもは回りが気になって不利となるのです。これは大人になっても大部屋で仕事に集中できない人はつらいものとなるのです。
7 7 子どもに働く親の姿を見せることは重要?
ご存じ本棚サイズの奥行きの収納に開閉式のテーブルを供え、ライティングビューロウのような書斎をつくる。まさしくオヤジの居場所「オヤジデスク」です。(7月2日付)家庭で親の姿勢を見せることは子どもにとって大きな思い出となるようです。では母親の姿はどうでしょう?やはり台所で働く母の姿、洗濯をする姿。家中を掃除する姿と、どこにいても働く姿のはずなのですが、実はこうした母親の姿を見られるのは子どもが幼稚園に行く前までの幼いころの記憶となります。なぜなら大方の母親は子どもたちを学校などに送り出した後に家事に専念するからです。
そこで、リビングのか片隅にオヤジデスクならぬママデスクをつくり、テーブルをおもむろに開けて、母親が日記を書いたり家計簿を付けたり、時にはミシンかけなどをするなどあえて“創作”の姿を見せるのです。父親と母親が二人並んでテーブルに向っている姿などなんとも微笑ましいものではないでしょうか。
オヤジデスクならぬ ママデスク (画:天野彰)
リビングのソファーがアイロン台に変身?
料理はもとより、リビングで子どもたちと団らんしながら、テレビを見ながらも洗濯物を畳んだりするのです。すると子どもたちは母親の働く姿を見るどころか作業に参加して来るようにもなるのです。イラストのようにリビングのソファーセットのいすやテーブルをすべて箱にし、中を家事などの道具の収納とし、ふたを開ければアイロン台となるなど、リビングダイニングにある食卓そのものが家事室とするのです。
LDKのソファーセットがアイロン台に(画:天野彰)>
お料理教室のようなアイランドキッチンがいい!
キッチンもただ母親の背中を見ているのではなく、写真のようにLDKの真ん中に大きなテーブルタイプのアイランドキッチンにすると周りから調理が見えるだけではなく手伝いやすく団らんも生まれるのです。
写真 LDKの真ん中のアイランドキッチン(I邸)(写真:天野彰)
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