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建築家 天野 彰 災害は想像と創造から

1 災害は想像と創造から

家が一気に壊れず助かることも、津波をやり過ごすことも、避難ルートをつくることも生き残るための“創造的減災”この10月の防災月間中にいくつかの講演とTVの出演などもしましたが、やはり「災害に強い」や「地震に負けない」などのタイトルの講演では人々はあまり集まらず寂しいものでした。TV番組にしても防災は他のバラエティなどとの組み合わせなどの企画でなければ視聴率も上がらず受けないなどと言う。一体どうしたと言うのでしょうそうです。あまりの惨劇をまるでパニック映画のように毎日大型テレビで目の当たりにしていると、もしあれほどの災害が起きたらなすすべもないなどと諦めてしまっているのです。これは対面してお話をする講演などでは反応でよく分かります。災害はいまだに対岸の火事なのです。

しかし最近ブレイクしている、新海誠監督の長編アニメ「君の名は」に私は若い人たちに一縷(いちる)の希望を持っているのです。あの衝撃的な21年前の正月の阪神淡路大地震では、直下型の激しい揺れで建物の倒壊により圧死され、瓦礫や家具に挟まれて逃げ遅れて火災に巻き込まれた多くの人が犠牲なり、東日本大震災では巨大な津波によって傷ましくも溺れて2万もの人が犠牲となり原発のもろさも露呈しました。しかしこの二つの大地震は今後の地震対策に、より多くの問題点と安全のヒントも示唆してもいたはずです。そして熊本地震です。

ハードとソフトの両面、そして絆を深めることが防災に繋がる

普段からの耐震強化はもとより、収納家具は床から天井までの造り付けにしたり、食器などが飛び出さないように扉を引き戸にするなどや、冷蔵庫などの家電も長周期地震にも備え、下の吸震クッションや手前を少し高くするなど、いざと言うときの避難経路を確保するなど家族を守るシミュレーションが最重要であることも教えてくれました。これによってハードとソフトの両面からの防災の意識が高揚し、何よりも家族や近隣がいざと言うときの共通の取り決めを持つこと、すなわち絆を深めることがさらに重要です。この地震国日本に住む以上は、地震はもとより台風そして津波は防ぎようがないのです。

リフォームの際は快適さだけでなく耐震補強も考える

長年家づくりに関わって来て、特に耐震耐火など防災に心がけて来たものの、便利で人が集まりやすい都市の平野部の活断層やあの巨大津波には確かに愕き途方に暮れたものです。どんなに快適で住みやすい家も大地震であえなく倒れ隣家から延焼してしまっては、家はおろか命を失うことにもなりかねません。今の家を耐震補強することは、バランスの良い壁の配置と補強にてまさしく壁自体のパワー?があるのです。それこそ、あの柱と梁をベニヤ板で釘か接着剤で貼り付けるというものなどリフォームの際、わずかな費用でも生き残れるはずなのですが・・・、なぜか現実のリフォーム現場ではいまだに収納やシステムキッチン、インテリアなどが優先されてしまうのです。せっかく快適リフォームをしても命取りになってしまわないように、リフォームチャンスの時にこそできる限りの耐震補強に費用をかけていただきたいものです。

あの巨大津波の大災害にもめげず、悲観的に考えないで、建てる方向や、防護ガード、さらには柱の強化などで一気に流されないように工夫もできます。沿岸部に住む人は長い人生の家づくりではいかなる災害にもめげない安全で快適で、しかも積極的に“活きる”ための家づくりを想像し創造するのです。

津波に半壊したが生き残った木造の家 仙台沿岸部     撮影 天野彰
津波に半壊したが生き残った木造の家 仙台沿岸部 撮影 天野彰

巨大な防潮堤よりも海と共に生きてきた知恵を生かした街づくりを

しかし現実は被災地の沿岸には巨大な防潮堤が建設され、5メータ以上もの高台?を盛土しています。もともと沿岸に住む人たちは古来海と共に生き、津波などの被害を想定して高台への避難などを考えてきました。今その基本思想が失われる物量的街づくりが問題で、私ども建築家たちはあの災害直後、そうした巨大津波にも耐えうる、いざとなったら車両や漁船や機材と共に逃げ込める円型のコロニーづくり(何度も添付しました2~5のイラストや写真)客家〈はっか〉の土楼〈とうろう〉風集合住宅、10メートルほどの津波ならやり過ごせる堅固な橋梁の上の街づくりなどを全国募集し、それらをその年の5月にはNHKにて紹介もしているのです。

中国永定客家の土楼の集合住宅  撮影 天野彰
中国永定客家の土楼の集合住宅 撮影 天野彰

イラスト:中国永定客家の土楼風円型の集合住宅群(画:天野彰)
中国永定客家の土楼風円型の集合住宅群 画 天野彰

イラスト:沿岸部の船形やフレーム橋脚の上のコロニー案と模型写真
沿岸部の船形(上)やフレーム橋脚の上のコロニー案(下)と模型写真(右中)

景観や環境を損ね、漁業にも支障を与えかねない、受けて立つ巨大な堤防をつくることよりも、円型の擁壁(外郭)や舟形の強靭なピア(柱)は波をやり過ごすだけで、抵抗も少なくはるかに低予算で、しかも人々は今まで通り沿岸のその場所に住めて街が活性化すると判断したからです。今からでは到底遅いかもしれませんが、豊洲の市場同様、原発や高速優先のすべての過去のインフラや政策を見直し。時の行政責任は政権がいかに変わろうとも、国の管理者とし、国民の財産と命を守り、過去を暴き、それを負う責任があるはずです。

2 コンクリートの箱の中に木造の家を造れば、強靭で割安な家ができる

耐震や免振、さらには大火災などのあらゆる災害を想定して家をつくることは至難の業ではありませんが、私はもっとソフトな外郭と内皮による「セルフディフェンスハウス」なる提案を長年に渡ってして来ているのです。それは、外側は厚いコンクリートの擁壁のような壁で固め、その内側に中庭式の開放的な木造の家を建てることです。ちょっと贅沢な話しのようですが、シンプルで強靭なコンクリートの箱の内側に住みやすい柱と土壁の“裸の家”をつくるのです。結果トータル費用は強靭な割に案外割安となるのです。

イラスト:強靭なコンクリートの箱の家の中は快適木造の家(画:天野彰)
強靭なコンクリートの箱の家の中は快適木造の家 画 天野彰

私事ですが、40年ほど前にわが家をそんなコンセプトで建てたのです。近隣の子どもたちからは天野プリズンなどと呼ばれたようですが、幸いにして何度か地震や火災に見舞われましたが何の支障もなく今も住んでいるのです。

写真:「プリズン」と呼ばれたわが家
プリズンと呼ばれたわが家

陽と風をまんべんなく取り込む、回転し地面に沈み込む家というアイデア

もう一つ別の日本の家らしい「外皮のない家」を画策しているのです。それはイラストのように夜間や災害時は地面に沈み込み、日中は顔を出して回転し、まんべんなく陽と風を取り込む浮き沈み回転ハウスです。まるで私の人生のような家ですが屋根まで沈み込むと敷地の中央に穴(中庭上部)が開いた庭だけの家となるのです。これは楽しいガーデンパーティができるのです。

イラスト:浮き沈み?回転ハウス(画:天野彰)
浮き沈み 回転ハウス 画 天野彰

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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