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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 生かすか壊すか?これからの住まいは想像力が大切!

1 家は人の想像力でつくりそれこそが創造となる!

生きるプライドの意識。そして生きる価値?いや、もっと生きるための価値観の創造の年となるのですそれは明日何が起こるか?今何が起っているか?想像からすべてが始まるのです。それは悲しいかな、前向きなことばかりではなく、時に疑心暗鬼であったりもすることも多いのです。都合主義の現代の法、論理ではなく、そこに住む人一人ひとりの本音の思いと本心の危惧こそが住むことの想像力であり、その結果が住まいの創造となるのだが、家は単なる建物であり、家族を包む箱であり、財産でもあるのです。

今も残る白川郷の合掌造り(天野彰撮影)
今も残る白川郷の合掌造り(天野彰撮影)

私は自分の心配と危惧からいろいろ想像し、いろいろな住まいのカタチや住まい方を提案して来て、今も励んでいるのですが、あの国立競技場のデザイン問題を発端に、人々が失望し、加えてエンブレムの無様な結末に、その費用とデザインのあり方、ひいてはそれを決定し推進すべき今の政治そのものや、重要な消費税の軽減税率のやマイナンバーにも、誰もがあきれ諦め、せっかくのオリンピックの盛り上がりに欠けるばかりか、なぜか誰もが関心を持てないようなそんな社会になっていることが空しい。しかも今やり直されている巨額の競技場やエンブレムにもこれほど期待が持たれず、そればかりか世界からも疑心暗鬼の目で観られながら担当せざるを得ない当事者たちが哀れで仕方ないのです。

そんな一年があっと言う間に過ぎ去ろうとしているのです。もう師走?!などと言うと年寄りくさいのですが、本当に早い!歳を取れば取るほど、時が経つのが早い気がするのです。そんな話しを学生やスタッフに話すとなんと彼らのほとんどが、私たちもですと言う。20代30代の若者たちが皆そうなのです。なるほど今はケータイやメールで、数秒後には相手に届き、数分で絵文字付きの返信が来る時代です。用件だけでとても深く考えられたやりとりとは思えずなぜか急に寂しくなり、現代の若者たちが可哀想で虚しくなり、なるほど彼らの時間が早くなることを改めて実感したのです。
 「時には自筆の手紙で書いてご覧。それがいかに文学的で哲学的で立体的で、デザインや空間構成にも役立つか分かるはずだよ」と、逆に彼らを慰めたのです。

今となってはいたし方のないことですが、オリンピックの例では、既存の競技場をリフォームすること、招致のためのエンブレムをさらに生かすことから考える。そんな協議を広く公募することで、どれほど国民の理解と応援を得られたか分からないのです。

イラスト:笑う門には福来る(天野彰画)
イラスト 笑う門には福来る(天野彰画)

2 わが国の家は伝統を生かされることなく違ったものとなった

「国立競技場はリフォームですべきだった!」なぜ躊躇することなく壊してしまったのだろうか?そんな声が今あちこちから聞こえて来るのです。なるほど席数が6万そこそこでしかも覆う屋根もない。そして再度のコンペ案でも競技場の周りに列柱のような支えがあって壁面緑化のような外壁の構想となっている。これなら増席のスタンドを列柱で支えてせり出し、軽量な木構造の庇をかければ今の予算の半額以下のリフォームでもできた。これがおおかたの意見となっているようです。おまけにエンブレムについても招致のためのバッチのデザインをさらにデフォルメして生かせば良かった!などとも。今となってはすべてあとの祭りなのだが、もしそんなテーマで発注者が協議して広く公募をしていればどれほど国民の関心と理解を得られたか計り知れないのです。

はるか昔のわが国の高度成長期の名残でもあるスクラップ・アンド・ビルドの時代からすでにビフォアアフターの時代となっているのです。今こうして考えてみると私たちも古き良き時代の骨太の旧家をいとも簡単に壊しベニヤの家に建て替えてきたことかと改めて苛まれるのです。

ビルの中の町家
ビルの中の町家

こうした話に私が常に例えるのが、あの白川郷のぶ厚い萱葺き屋根の合掌造りの家と、京の中庭の町家です。厳寒多雪地帯故の合理的な合掌の妻側(三角形側)は風通しの良い開放できる涼しい“夏の家”の設計思想でありながら、冬は熱ロスが少ない暖かい家で炉の炭火一つの暖房が効いて暖かい。町家もしかりで、建具を閉めれば陽だまり、開ければ中庭から空気が抜けて風洞のように涼しい。つまりは屋根と柱だけの、自然環境を生かした「傘の家」なのです。

合掌造妻側
合掌造妻側

誰もがそんな家が良いと思うはずですが。なぜか実際は高気密高断熱の壁の家となっているのです。しかし断熱効率がいいと言っても厳寒の比較的乾燥した北海道など一部の地域を除いて、壁の家は蒸れやすく暑苦しくもなります。こうして古来わが国の家づくりは、なによりも一番に風の通りを考えることです。この家の発想はまさしく「夏の家」であり、柱と屋根の、すなわち「傘の家」なのです。この家の形はまさしく柱だけの家で、唯一用心のため、塗り籠め(ぬりごめ)と言う木舞壁(こまいかべ)の土壁と板戸で囲まれた言わば納戸(寝室)がある程度で、のちに都市の家となり町家のように隣家に接するところや、北側が土壁で覆われたものが有るものの、元来「傘の家」なのです。

イラスト:傘の家 壁の家
傘の家 壁の家

実はこうした家の設計思想は、いくら西欧文化が浸透し、近代化されようとも昭和の時代まで営々と続いてきたものです。私が生まれ育った家も、始めて設計した家もこうした思想が大勢で、その建て方と思想でデザインをしていたのです。私の師匠とはまさしく建て主と棟梁たちで、伝統工法や生活思想を実地で学んだのです。

実家に再現したYさんの大黒柱のある週末住宅
実家に再現したYさんの大黒柱のある週末住宅

しかし高度経済成長にともない輸入材や輸入技術がわが国に浸透し、家づくりは工業化され、この伝統的な和の住まいの思想は薄れ、次第に壁の家となって行くのです。住まいの工業化は近代化の流れとしても、この“和の思想”が継承されずに来たのは残念でなりません。しかも急激な都市化で鉄筋のマンションとなり、密集して通気も悪く、クーラーが必要不可欠な壁の家となったのです。和はすでに思想ではなくイメージかフォルムの一つとなったのです。教育の現場でも伝統的思想は教科になく、単に茶や花の作法となっているのです。

写真4:母と住むSさんの大梁と土佐漆喰の家
母と住むSさんの大梁と土佐漆喰の家

今、経済成長を終え高齢化し,心のふるさととして伝統文化に魅かれ、心の行きどころを見つけるのです。また同時に身体も冷暖房に弱く、自然の通気を求めるようになって“和の思想”が今、心の安らぎとなってもいるのです。今こうした面影のある家は壊さず、あえて生かして設備だけを新しくと言う“生かすリフォーム”がいいのです。

3 地震に勝つ!その前に

地震に対し対処してわざわざ家を建て替える必要はあるのでしょうか?確かにオリンピックの開催は大変大きなイベントで各国、数百億ほど掛けて新競技場を造って、お祭り騒ぎを行っているようで、途上国の発展に寄与するところは大きいと思われます。しかし成熟した都市においては累計で数千億ともそれ以上とも言える費用をかけるその意味合いが少し違うような気がするのです。レガシーなどと言った心地よい謳い文句があるようなオリンピック後の効果的で意義ある成果とはいったい今のわが国にとって何が必要なのか改めて考えてみる必要があるのではないでしょうか。

まずは都市部の強化ですが、災害やテロなどに対する強化、耐震などのハードだけではなく柔軟な避難と救助などその生きるためのルールを考え準備することです。特にエネルギーと通信、緊急のシェルターなどです。年頭に際し、毎年頭を冷やすような災害や事件が起こります。その最たることがあの阪神大震災です。まだ正月気分覚めやらない1月17日早朝の全国を震撼とさせた都市中央部で起きた直下型地震で、6500人以上もの死者を出した1995年の1月、だれもが目を疑ったものです。あれからすでに21年の歳月が流れ、いろいろなことが分かって来たのです。

阪神大震災で壊れた家々(天野 彰写真)
阪神大震災で壊れた家々(天野 彰写真)

一瞬の圧死を防ぐ、耐震強化はもとより、まだ被災者の2割以上が生存の可能性があったとも言われる被災地に、早々に通した通電火災による焼死者、救助を阻んだ安否確認や帰宅のための渋滞など、ソフト面での対処策があったのでは、と言われているのです。その間にも数々の地震や災害が各地を襲い、ついには巨大津波の東日本大震災となったのです。地震や台風に勝つ要塞のような堅固な都市や家がまずは望むところでしょうが、実際には想像を絶する強風や揺れも起こりうるのです。

阪神大震災の惨状(天野 彰撮影)
阪神大震災の惨状(天野 彰撮影)

あのアメリカのハリケーンや竜巻でたびたび見る、家の基礎や地下だけを残した家々の生々しい惨状がまさにそれです。すでに21年を経た阪神大震災で、初めて体験した揺れもまさに想像を絶するもので、家が飛び跳ねるように倒壊し、3センチ以上の太ささや厚さの鉄筋や鉄骨がスパッとぶち切れるように瞬時に切れるなど、私自身が立ち会った破断試験ではとうてい信じられない、まさに爆発に匹敵する応力がかかったりもしたのです。それでも幸いにもかろうじて倒壊を免れた家も多いことも分かりました。しかもそれが必ずしも堅固な新築ではなく、倒れ掛かった古い家に丸太でつっかい棒をしただけのものが助かり、傾いても倒れなかった家の住民が助かっているのです。

東日本大震災の惨状(天野 彰撮影)
東日本大震災の惨状(天野 彰撮影)

それこそが揺れに身を任せる制震や免震などで、今日さらに進化しているようで、改めて古来木組みの木造の柔軟性なども見直されているのです。加えてその知恵は省エネルギーやバイオマスなどの新エネルギー、自足自給の家へと進化するのです。今「レガシー」として望まれるのはそんな新しい都市づくりのシステムで、さらには皆で互いの生活を守る社会のルール、いやもっと心の洗練ではないでしょうか?「一億総何とか」とは、まさしくそんな想像とコンプライアンスの醸成だと思われるのです。

イラスト:漢民族の客家に見られる津波にも生き残れ、シェルターにもなる案(天野 彰作画)
漢民族の客家に見られる津波にも生き残れ、シェルターにもなる案(天野 彰作画)

しかしながら今、すでに、経済とニーズのバランスを持った競技場づくり、予算づくり、あるいは国民のためのデザインとは?そのデザイナーの資質と役割とはまさに存続のための安全と安心のコンプライアンスの精神が、「一億総意」として創られようとしているのです。これこそまさしく、すでにオリンピックレガシーなのかも知れません。

4 セルフディフェンスとサポートの家

これからの私たちの家はセルフディフェンスとセルフサポートができる家がなによりもいいのです。特に年老いて夫婦二人だけで住むには大きな家より身のほどのサイズのこじんまりした家が住まいやすいのです。その家は何も新築する必要もないのです。それこそ今の家を思い切って整理し、最小限に減築して、余ったスペースをアパートや貸駐車場にし、趣味の仕事場などにするなどしてそれを糧(かて)に長い老後を生きていくこともできます。

室内からも方杖(ほうづえ)や柱梁(はしらはり)の補強など少しずつでも耐震強化に努める
室内からも方杖(ほうづえ)や柱梁(はしらはり)の補強など少しずつでも耐震強化に努める

今まで、はなやかに暮らしてきた人々や、わが家だけで悠々自適に過ごしてきた人には今さら面倒で惨めったらしい感じもするかもしれませんが、こうも寿命がのびて、医療費はもとより年金不安、介護施設での不祥事などが起こるとますます老後不安を掻き立てられるのです。今時代が大きく変わっていることを認め、改めて老いて生きていくための方策を考える必要があるのです。このことはなにも高齢者に限らず、若い世代もかつての世の中の経済至上主義社会から持続社会へとバランスが大きく変わり、しかもかなりの高い確率で大地震の可能性もあるのです。
 記憶に生々しい都市直下型の阪神大震災や、その僅か16年後の3月11日東日本大震災の大津波とまさかの原発の破壊も起こりうるのです。

家具が倒れて下敷きにならないように天井までの家具。簡単なつっかいで助かる
家具が倒れて下敷きにならないように天井までの家具。簡単なつっかいで助かる。

ひところ危機管理やコンプライアンスなる言葉が流行ったこともありますが、それらはまさしく絵空事で、実際に立て続けに起こった大震災のまだ5年もたたないうちにあいも変わらず、その根幹である耐震や杭の偽装、さらには免振ゴムの偽装など!信じがたい企業のあり方や行政監査も含め、あらゆることが信用出来ない世のなかとなってしまっているのです。その都市や国家の危機管理にしても、次々に建つ高層ビルの反面、肝心の道路や鉄道さらには上下水道など、あらゆる都市のインフラが老朽化し限界超え、オリンピックの新施設づくりにうつつを抜かしている事態ではないのです。

弱い柱を”二本の通し柱”を添えて”三本の矢”に補強する
弱い柱を二本の通し柱を添えて三本の矢に補強する

住まいも、持ち家願望が80%とも言われるわが国の特殊実情からか湾岸の高層住宅に対し、市街地の老朽家屋の空き家がかつての予想をはるかに上回り800万戸以上とも言われ、バブル期の分譲マンションも補修や建て替えなど、とてつもなく大きな試練を迎えようとしているのです。しかも高齢世帯や独居老人などが多く、改めて低家賃の優良公共住宅の供給がなされなかった国情に思い知らされるのです。こうした現実を誰もが止めることもなく実行されて来て、わが国の本来の堅実と誠意がついには食や医療などあらゆる分野に企業ぐるみの偽装や詐欺が横行するような結果となっているのです。しかしながら私たちはこれからも生きて住んでいかなければなりません。何も突然の危機に悲観することなく、徐々にやってくる老いや老朽化など、わが内なる危機を想像し、頼るばかりではなく、都市に住む一人一人が「セルフディフェンス」と「セルフサポートの自助自立の意志と思考を持つことこそが大切な時代と思うのです。

写真:天井までの造りつけの家具で倒れないばかりか天井まで支える
天井までの造りつけの家具で倒れないばかりか天井まで支える

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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