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都市での家づくり わが家に危険が
住まいを建てるとき自分は若い!いつまでも元気だと思いがちです。これが住まいの設計思想に大きな間違いをもたらすのです。若いと言っても、家を建てるチャンスを得るのは早くて40代か50代です。
今の家を建て替え、リフォームしようと言うと、一般には「最期の家」となります。人生最後まで住むことを考える必要があるのです。しかし残念ながら“今”しか頭に浮かびません。
1 いつまでも若いと言えない「人生時計」
しかし若いと言ってもわが「人生の時計」を見てみますと、さっそうと始まった新生活も、気が付けば忙しい子育てに追われ、老いた親たちを気に留めながらの生活となります。核家族になった時代、わが子わが親をどうするか。わが孫の行く末までを考えて今の暮らしを見てみますと、頭の中にあの時計の文字盤が浮かびます。
あの人生時計です。そこに改めてわが生涯を映し出してみますと12時のところ(実際は0時、24時?)は“100歳”。その真下の6時が今の50歳いずれ定年するわが身はまさに午後9時の7、80歳の後期高齢者。その時わが子は真半分の50前となるのです。
こうして親子それぞれの時計を合わせて見てみますと、互いのこれからの人生がくっきりと見えて来ます。かつて元気に時を刻んでいたあの時計もあっと言う間に子どもたちは出て行き、狭い家も今は意外に広く、残されたわが身は住まいのあちこちに危険を感じるようになり、動作もさらに緩慢となります。しかし“時計”は依然コチコチと止まりません。
この“時”こそが、住まいと共に朽ち行くわが身の現実であり、若い今、そのわが身、わが家族のために住まいづくりに何を注意し備えるべきか考えるのです。
2 感じなかった段差こそが危険!
その一つが段差です。家の中には段差がたくさんあります。わずか3㎜か5㎜そこそこの畳と廊下との小さな段差で爪をはがし、布団や座布団などに躓いて転んだりすることも起こります。まさに加齢につれて小さな奥行きや高さの認識をしにくくなり、おまけに動作も鈍くなり大事故にもなりかねません。注意すべきは玄関マットやじゅうたん、畳とフローリングとの小さな段差が危ないのです。
意外にも玄関の上がり框(かまち)や、小上がりの和室などの大きな段差の方が見誤ることも少なく注意もし、かえってこの動作が足腰を鍛えることにもなると言うのです。
しかし忙しく動くダイニングやキッチンとの段差、廊下などの動線の途中にある段差は危険です。特に緊急を要する地震の時のことも想定する必要もあります。わが身わが家族を守るために、生活行動がスムースになる間取りを考え、イラストのようにぐるぐる回れるサーキットプラン「カニの横歩き」とし、いざとなって、暗くなっても逃げやすくする。いつも居るダイニングテーブルの周りは特にすっきりさせるのです。
階段の事故が多い(躓き・踏み外し・転倒・落下)都市の生活では2階、3階建てとなり、その階段での事故が多く、しかも大きい。リズミカルに降りているつもりでも足が遅れ、スリッパが脱げたり、滑り止めに引っ掛かったりもする。特に降りる時に多く大きな事故に繋がりやすい。そんなときこそ手すりが重要です。
利き腕は家族でも違い、何か物を持って上がり降りするときも両側にあった方が安心です。若い人でも酔ったときや、足をくじいたり、骨折した時など両腕でよじ登ることもできます。
こうして階段は極力ゆったりとつくり、できればUターン式にして広い踊り場を儲け、いざ転倒と言う時のことを考え、ソフトなカーペット敷きにするなども考えます。簡単な滑り止めマットも市販されています。
この階段は日常のリハビリとなり足腰のためにも有効となり、住まいの中で目線が変わり景色が変わる心理的変化にも有効と言われているのです。
3 温度の“段差”(ヒートショック)が危険!
かつての田舎家などは湿気を嫌い風通しの良い「夏の家」のつくりで長い廊下もあり、最悪トイレや風呂が外にあるなど家全体が寒く、またその生活に慣れて来ましたが、現代の暖房のある住まいでは、暖かい寝室やリビングからトイレや浴室などへの僅かなその間の急激な温度差の為にかえってヒートショックなる疾患を引き起こし最悪生命の危険もあるのです。
床暖房や高気密高断熱の全館暖房が理想ですが、寒い部分には暖房機をケチらず、住まいの中での温度差を極力なくし、浴室には入る前に熱いシャワーやお湯で空間を温めることが重要です。
意外にもこうした段差、温度差の事故は動作も緩く慎重なお年寄りよりも、活発に動く若い人や子どもの方が多いとも言われているのです。
次回は都市での家づくりではいかに空間を立体的に使うかのお話しです。
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