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2025年4月1日(火)
天野 彰
「『家相』ってあるんですか?」家づくりの際によく出る質問です。私はすかさず、その建て主に向かって、「あります!あるのです!!」と答えるのです。なぜなら、その人が「家相」はあるのか?と案じているからです。案じていなければ気にも掛けないし、聞いても来ません。
一般的には何やら訳の分からない「家相」なるものがあるらしいことを知っていて、そのことが気になる人は、すでに「家相」の影響を受けていることになるからです。謎かけ問答のようなお話しですが、実際の家づくりの場面で、そろそろプランが煮詰まってくる頃になると、なぜか必ずご夫婦のどちらともなく「家相」のお話しが持ち上がってくるのです。多分そのどちらかの親や兄弟の誰か一人でも気にして発言するだけで、結果、全員がこの「家相」の存在に影響を受けてしまうようです。なんと私がお手伝いした家のほとんどがそのような感じがするのです。このITの現代社会においていったいなぜなのでしょう?こんな話があります。
「家相なんてナンセンスですよね」と言っていた若い建て主も、設計が終わりいよいよ工務店に見積もりを発注と言う段になって・・・。「あのー、家相に従ったプランにできますか?」となるのです。こちらとしては「えー?なんで今さら?」ですが、結局、実施設計の根本的なやり直しとなってしまうのです。この段階では建て主も実施設計の費用が倍かさむことになるのですが、その理由を尋ねると・・・なんと、両親からの援助を当てにしていたらしく、その前にプランを見せなさいとなり、たまたま知人の家相家の診断を受け、大きく鬼門に障っていてこれでは息子さん家族の健康が危ない!とまで指摘されて、結局こんな家に資金を貸せない!となったと言う。まさに“経済封鎖”だったのです。
私ごとですが、私自身の家づくりでこの「家相」では他人事ではない体験をしているのです。まさに家づくりのさ中、妻が思いがけず大けがをし、両親から鬼門の指摘を受け、家相家に診てもらえと矢の催促を受けたのです。近代建築を誇る新進の?若き建築家としては、そんなことは関係ないと頑張ったのですが、両親に泣きつかれ、やむなく設計図を家相家に見せたところ特段障りなしと言うことでほっとしたのです。
ところが、その家相家から家の外の鬼門に相当するところに何かないかと聞かれ、まさかと思いつつも、取りあえず大工さんと敷地のあちこちを探ったところ、なんと!私が購入した旧家屋の3分の1部分の真ん中に相当するところ、つまり私どもの家の北東の鬼門に当たるところに古井戸らしきものがあったのです。もとの屋敷の売買に際し、建物の解体でその井戸にガラやゴミなどを投げ入れて土で埋められていたのです。これには工務店ともども驚き、さっそくきれいにさらえて掃除をして、小さな長男ともども神妙にお祓いを受けたのです。その結果かどうか?家内は大事には至らず見る見る回復をしたような気になったものです。
結果、近代建築云々の私はたちまち家相信奉者?となっていたのです。以来旧家屋解体後の新築時にはそんな私の轍を踏まないよう、必ずこうした古井戸や池の跡などをしっかりと探るよう努めているのです。このようにわが身に何かが起こり弱気になった途端に「家相」はあるのです。家相に全く興味のなかった人も、時に不幸に見舞われたり病気になったりして、私のように親戚や友人に何か言われると突然、まさかと思いつつも「家相」が気になりだすのはありがちですが、こんなきっかけから家を建て替えようとしたり、リフォームをしようと言う人も多いのです。若くして建てた自慢の住みよい家もこうした、えも言われないルール?によって老いてから人に指摘された途端にその家が気に入らなくなってしまう人もいるのです。こうして、もともと家相が気になる人にとっては「家相」はとても大きな影響力を持っていて、その設計上も大きな支障となることも多いのです。結果、家族が住みやすい家よりも“家相のための家”となることもあり注意が必要です。
考えようによっては、「家相」のあるなしにかかわらず、家を建てること自体にそれほどの影響力があると言うことで、家づくりは慎重かつ丁寧に進めるべきと言うことなのです。何はともあれ「良相の家」とは風通しが良く、人の気もぐるぐる回れ、動きやすい家となるのです。
かつての京都の町家もきちんと家相重視の平面図で設計されていることも興味深いものです。
そこで私はプランニングの際、まずは住みやすさを第一義に自由に推し進めたプランをいくつかつくり、その上で「家相」の一定の基本ルールを重ねて考え修正を施すようにしているのです。
すなわち私のまとめたイラストの家相盤の真っ黒になっている「鬼門」や「張り」「欠け」つまり家の北東と西南方位の45度を「鬼門」と「裏鬼門」とを重視し、その方位の家の「張り」出しと、「欠け」込み(全長の半分以下相当の)と、水回りと出入口だけは必ず避けるようにチェックするのです。こうした最低限の「家相」さえ守っておけば、無理したプランにならず住みにくい家ともならず、もし何かあった場合や、さらに老いて気弱になったときも、こうした指摘にあたふたと動ずることもないと思うのです。
岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。
一級建築士事務所アトリエ4A代表。
一級建築士天野 彰 公式ホームページ 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ
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