住宅関連記事・ノウハウ
2025年11月29日(土)
庭があって初めて夫婦の「家庭」?!~夫婦の家
はじめに
桜の咲く季節になると、なぜか落ち着きません。桜がいつ開花するか、いつ満開になるか、天気はどうかと、真剣に花見の日取りを決め、宴会の予約や場所取りを心配するのです。
私の事務所の花見はもちろん、友人や所属するロータリークラブ、学会のメンバーなどの花見や観桜会もあり、気忙しくなります。この桜が咲くわずかな間に、最も美しい満開の日と場所を真剣に探すのです。わが家系は代々、花見と花火を好む傾向があり、祖父や父の好きな詩も散る桜 残る桜も 散る桜
で、一瞬に華やかに輝き散る桜や花火に強く惹かれます。
桜の季節は落ち着かず、見逃すと箱根の山に行ったり、秋田の角館や北海道の函館にまで桜を追いかけたりもします。

特に東日本大震災以降、桜を見る気持ちに異変が生じました。震災直後の上野の桜はためらうかのようで、被災地の桜はむなしく、白々しく感じました。その後の年も、咲き誇る桜に何故か寂しさを覚えます。しかし、今年も異常気象や不安定な世情の中で立派に咲く桜に元気づけられます。この季節、自然と家の庭に目が向きます。
猫の額ほどの小さな庭やベランダ、近隣の小公園にも季節の花が咲き、芳香が漂うと心がわくわくしてきます。家づくりでも庭に目を向け、園芸雑誌や庭づくりの本を買い込み、夫婦で植えたい木や植物を選ぶ楽しみが増えます。ハナミズキ
シャラ
ドウダンツツジ
など、芽を吹き、花が咲き、紅葉を楽しめる木もあります。妻はこの木を玄関に植えましょう。春になると薄紅のきれいな花が咲くわよ
と言い、夫はジンチョウゲやクチナシを選び、どちらも花の香りがいい。ジンチョウゲは春、クチナシは夏に咲く
と話します。マンション暮らしで忘れていた幼いころの庭の季節の香りを思い出すのもこの季節です。

密集地の中庭やマンションのベランダでも、鉢植えの植物で季節感を出し、家庭菜園も楽しめます。次第に夫婦の好みの庭が出来上がり、子どものように育つ苗に励まされ、元気が出ます。子どもがいない夫婦や、子どもが巣立った夫婦も、生を感じ共に生きていることを実感できます。
家づくりは家
だけでなく庭
にもこだわって初めて、夫婦の家は「家庭」となります。そしてその庭は思い出の庭として、家族と共に生き続けます。

夫婦の家は男と女の人生
全国民の4人に1人が65歳以上となる超高齢化時代、改めて注目されるのが夫婦の家
です。子育てが終わった家族では当たり前と思われがちですが、現代の住宅問題は家族、とりわけ夫婦の高齢化です。将来的な医療費負担や独居老人の問題も深刻です。
核家族化が進む中、同居を拒む親夫婦も多く、いずれかが入院や施設に入ると独居状態となります。これにより長期入院の際の施設不足や自己負担の増加も課題です。
入院が必要ない場合でも、日常生活の世話や夜間の不安から入院希望が出ることがあります。いわゆる社会的入院で、政府は医療費削減のために在宅療養・在宅介護を奨励しています。しかし70歳を超えた夫婦が連れ合いを看護・介護する方法は容易ではありません。少子化の中で、1組の子夫婦に両方の親や祖父母までを抱えるケースもあります。

少子化解消のための住まいの広さや託児制度の不備、短絡的な消費増税は社会的問題を解決していません。医療費削減策も、若い世代の子育てを難しくし、少子化を加速させています。夫婦の本来の男と女、そして家族のあり方がねじ曲げられているのです。
しかし、余裕のある夫婦は50歳前後で男と女の原点に戻り、未来を考えることも可能です。養子や里親の選択肢もあり、子どもが多いことは楽しみであり、家族の活力につながります。

私の住まいの設計思想は夫婦を中心とします。しかし夫婦を単一の存在と考えず、夫である男
と妻である女
の人生を主体に組み立てます。住まいの基本は夫婦と思いがちですが、どちらか一方の意見に押されてプランを作ってしまいがちです。男と女の家
にはそれぞれの葛藤や魅力、想いがあります。
家を建てる際は、インテリアやキッチンに惑わされず、子ども中心の家にせず、自分たちの夢を描くことが重要です。その夢と予算を設計者に伝えれば、子育てや老後まで考えたプランにしてくれます。設計者は設備やモノからスタートしません。

チャールズ・チャップリンが映画ライム・ライト
で、失業中のバレリーナに言った人生はすばらしい。大切なのは勇気と想像力だ
というセリフは、今なお感動的です。人生は一度しかないからこそ、すばらしいのです。
わが家は夫婦の顔
家のデザインを一言で表すのは難しいですが、機能やニーズ、環境のバランスから成り立つデザインこそが理想です。間違った瞬間には耽美になったり、攻撃的で目立つデザインになったりすることもあります。特に建物の外観やインテリアは、住む夫婦や家族の動きや居心地が重要な要素となります。目を引く外観も重要ですが、家族の居場所を重視したゾーニングや遊びのあるプランニングこそが、現代にふさわしいデザインです。

設計の際、私は土地のロケーションと夫婦の顔を見て、家族の顔をイメージします。まだ輪郭だけの段階ですが、このイメージは設計の最終段階まで付きまといます。しかし、それだけでは不十分で、夫と妻を別々に観察して確認します。
建て主はえっ? 何をいまさら?
と驚かれることもありますが、この段階での怪訝な表情こそが、本当の夫婦の顔であることが多いのです。家の顔は中身と一体であり、一見派手な奥様が光と影を楽しむ感性の持ち主だったり、無関心に見えたご主人が実は目立ちたがり屋だったりすることもあります。
夫婦の本当の顔が見えると、家の外観やインテリアの見せ場も明確になります。洋風モダンな外観が落ち着いた和風に変わったり、外観よりインテリアを重視することもあります。住まいの広さについても議論が生じ、設計途中で調整することで、夫婦双方の納得する家が完成します。

わが家をみんなの学習塾に
定年退職を迎え、夫婦だけの生活が始まると、今まで経験のない毎日が訪れます。会社人間だった夫が突然毎日家に居るようになり、慣れない生活の中で、朝は背広を着てネクタイを締め、出かけるふりをして駅前で時間をつぶすこともあります。これでは夫婦の残された人生が余生になってしまいます。
そこで一念発起し、家をリフォームしてLDKや和室を含めた大きな部屋に改造します。大きなジャンボテーブルを置き、その端には流しやレンジも備え付けます。料理教室や家庭科室のように使い、友人や近所の人たちと料理や菓子作り、花道や陶芸、絵や習字などを教え合うことができます。

夫も豊富な知識や経験を活かし、英会話や経理、税理などの塾を開くこともできます。こうしてわが家を学習塾として活用し、生涯働ける職住近接の職場
を夫婦で作り上げるのです。
ジャンボテーブルに鉄板や鍋を組み込み、家族や友人が集いやすく、生涯楽しめる空間を作るアイデアです。
この囲炉裏ダイニングの原点は、私が1964年に設計した大分県臼杵市の小手川邸です。洋式のフード付き暖炉で魚や肉を丸焼きにする仕組みで、家族で囲みながら食事を楽しむスタイルでした。
築15年のわが家リフォーム時には、ダイニングキッチンを大改造し、ジャンボテーブルに24mm厚の鉄板をはめ込み、本格的ステーキハウス仕様にしました。テーブル端にはコンロを内蔵し、6人ほどが囲める鍋コーナーとして、すき焼きやしゃぶしゃぶも楽しめます。


こうした定年後の夫婦の生き方をまとめた著書夫婦の家
(講談社+アルファ新書)があります。是非書店で見つけてみてください。

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