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建築家 天野 彰 夫婦の家 住まいは子育てではなく“夫婦”育て?!

住まいは夫婦のためのもの

住まいは誰のためのものなのでしょうか。最近のプランを見ると、いまだに子育て優先の住まいが多く、マンションや建売住宅では2LDKや3LDKといった判で押したような間取りが主流です。しかし本来、住まいとは夫婦のためのものです。日本の家は古来、家族がともに暮らす場であり、先祖とともに働き、住み、子孫繁栄のための場所でもありました。子育ても重要ですが、それ以上に夫婦を育み、老いをいたわる場であるべきなのです。子どもはその中で自然に育つものです。

近代化の波により、住まいは機能優先のものとなりました。フランスの建築家ル・コルビジェは住まいを「住むための機械」と表現しましたが、それは子育てのための機械ではなく、夫婦や家族が快適に暮らすための機能的な空間を意味しています。

住まいの中心はLDKです。個室の数よりも、リビング・ダイニング・キッチンが優先されるべきです。憩いの場、料理や家事を楽しむ場、水回りや収納などの機能が充実していることが、快適な暮らしの基本です。江戸時代の裏長屋や広間三間型の家から現代の2LDKまで、日本の住まいは形式や精神性が優先され、生活機能が二の次となる傾向が見られます。

イラスト:洞穴住居から変わらぬ家族のカタチ(画:天野 彰)
イラスト:洞穴住居から変わらぬ家族のカタチ(画:天野 彰)
イラスト:江戸の裏長屋(画:天野彰)
イラスト:江戸の裏長屋(画:天野彰)
イラスト:「広間三間型」の日本の家、なんと現代の2LDKと同じ?(画:天野彰)
イラスト:「広間三間型」の日本の家、なんと現代の2LDKと同じ?(画:天野彰)

現代の住宅では、個室の数を優先するあまり、リビングダイニングの重要性が軽視されがちです。子どもを各部屋に閉じ込め、夫婦も個室に分かれることで、家族が一緒に憩い、料理や食事を楽しむ時間が減っています。これは封建的な家の形式や、子ども部屋優先の文化が背景にあるからかもしれません。

子どもはすぐに成長して家を出て行きます。そのとき、夫婦の時間はどうなるでしょうか。定型プランに従うのではなく、子どもを一旦忘れ、夫婦の生活スタイルやこれからの暮らしを想像して、オリジナルのプランを考えることが大切です。

イラスト:照明の演出(画:天野彰)
イラスト:照明の演出(画:天野彰)
イラスト:夫婦の住まい『人生時計』(画:天野彰)
イラスト:夫婦の住まい『人生時計』(画:天野彰)

夫婦中心の家が愛情を育む

夫婦が中心の家では、子どもは自然に親の姿を見て育ちます。親が日常の家事や読書、片付けをする姿を見せるだけで、子どもは学び、夫婦の会話や一体感を感じながら育ちます。定型プランに従った2LDKや3LDKの住まいでは、家族の暮らしが画一化され、夫婦の楽しみや夢も生まれにくくなります。

LDKの活用は重要です。キッチンに食卓を置き、奥にリビングを設けると、調理の音や匂いが充満し、大きな“K”だけの空間になってしまいます。そこでLDKを分解し、DKとLに分けることで、夫婦それぞれの空間を確保しつつ、家族が一緒に過ごせる工夫が可能です。

イラスト:LDKの中ほどにハッチでLとDKに仕切るスケッチ(画:天野彰)
イラスト:LDKの中ほどにハッチでLとDKに仕切るスケッチ(画:天野彰)
写真:LDKの間仕切りハッチ情景(写真:天野彰)
写真:LDKの間仕切りハッチ情景(写真:天野彰)

K側は主婦の作業空間、L側はリビング兼夫の仕事空間として活用。子どもは自然に母の家事や父の遊びに興味を持つようになり、家族全員の生活が豊かになりました。この体験から生まれたのが、「狭楽しく住む」や「住まいのソフトウエア」といった考え方です。

書籍写真:狭楽しく住む・住まいのソフトウエア
書籍写真:狭楽しく住む(新声社)/住まいのソフトウエア(凱風社)

夫婦の居場所を確保する

夫婦が一緒に過ごす場がないことは、現代の住宅で深刻な問題です。子ども部屋優先の間取りでは、夫婦は互いに狭いLDKで疎外感を感じ、生活の楽しみも減ってしまいます。互いの生活空間を分けつつ、一緒にいる時間や場所を確保することが大切です。

夫婦いつも一緒の書斎プランとスケッチ (画:天野彰)
夫婦いつも一緒の書斎プランとスケッチ (画:天野彰)
夫婦いつも一緒の仲良し書斎(画:筆者)
夫婦いつも一緒の仲良し書斎(画:筆者)

夫婦の寝室を最優先にする

夫婦の寝室は愛の巣として家の核心です。2LDKでは個室が子どもに占有され、夫婦はLDKの片隅で寝ることもあります。6畳ほどの寝室でも、衝立やカーテンで仕切れば、夫婦それぞれのプライバシーや冷暖房の調整が可能です。新築やリフォームの際には、2つに分けられる寝室の設計が理想です。

3人の子どもにそれぞれの部屋 画 天野彰
3人の子どもにそれぞれの部屋 画 天野彰
たとえ狭くとも夫婦二つになれる「夫/婦寝室」(画:天野彰)
たとえ狭くとも夫婦二つになれる「夫/婦寝室」(画:天野彰)

家に色気を取り戻す

現代の住宅は合理的・機械的で色気がなく、遊び心が失われています。かつての日本の家には大工や庭師が醸し出す風情がありました。浮世絵に描かれる江戸の生活文化のように、日常に美や遊びが存在していたのです。しかし近代化の波で、住まいや生活は工業的で無機質になってしまいました。

入浴も開放的で色っぽく(画:天野彰)
入浴も開放的で色っぽく(画:天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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