住宅関連記事・ノウハウ
「木の住まい」が一番 木の薫りは人と地球を守る!
今、住まいはもとより、建築・建材の分野は建築再生へ大きく舵を取り始め中でも輸入材に押されシェアを減らし続けていた国内の木材も、輸入木材の海外自然保護による伐採の禁止や規制により供給は減少し新興国の経済発展による木材輸入が増加傾向にあり木材需給が逼迫しているのです。日本国内の持続可能な林業への取組みなどもあり、 国産材の競争力は徐々に回復の傾向にあるのです。一方で国内は大災害に向けて「国土強靭化基本計画」が打ち出され、その中で、災害に強い避難施設や住宅を掲げているのです。
1 国産木材が注視され、強化・耐火木材に関心が高まっている
日本は狭い国土ながら森林面積は2,500万ヘクタール以上と言われ、人工林率はその内の4割、中でも育成の早い杉の人工林は、447万ヘク タールと人工林の43%を占める膨大な量(農林省調べ)となっているのです。しかしそのほとんどが放置され、山は荒廃して災害や、あのスギ花粉症などの原因となっているのです。さらに2020年オリンピックの国立競技場の木造化?をきっかけに日本の林業が見直され、日本産木材の強化・耐火によって高層建築や住宅などへの有効利用をし、都市での木の家・森のオフィス」さらに本無垢の家具や建材へと、建築はもとより都市や生活も変えて行くのです。今、私は心ある企業と大学などと、気の本質を探り、効率の良い効果的な木材強化を行い、木質細胞無破壊のしかも短期自然乾燥の特殊な「炉」を編み出し、強化不燃剤の含浸技術にて、無尽蔵にある杉材など国産材の再生を研究しているのです。
写真 木のやすらぎ 雪に埋もれる合掌造り(天野彰)
ちょっと専門的になりますが、省エネルギーの環境学の分野では「コ・ベネフィット」なる総合的相乗効果を上げる試みが言われているのです。これは省エネのみならず、環境づくり、健康そして経済効果など多岐にわたる効果です。「コ・ベネフィット」など馴染みの少ない言葉ですが、ところがどっこい私たちの日常の暮らし方、生き方で大いに街や国、地球規模の環境保全へと人類の生存につながると言うものです。ちょっと大げさな話しですが、分かりやすく言えば、私たちの住まいを断熱工事することは夏涼しく冬暖かく快適になるだけではなく、光熱費が割安になるのは当然として、心疾患や脳梗塞の軽減やリウマチや癌など冷えからくる健康障害などを抑え、健康に暮らせるばかりかその為の医療費の削減となるという効果も挙げられます。そんな経済効果どころかもっと地球規模での資源を守り、さらに二酸化炭素削減ともなると言うことです。
幸せを呼ぶ、一石二鳥どころか三鳥あるいは四鳥の、風が吹けば桶屋が儲かるの例えの相乗効果と言うものです。
その元はと言えば、私たちの周りにある無尽蔵の木を見直し、木の住まいは暖かく気持ちがいい・木の持つ肌触り、香りがいい」などフィトンチッドやヒノキチオール、そんな当たり前なことから研究は始まるのです。木を見直すことは、山を守るだけではなく、地球規模の奥が深い幸せの「コ・ベネフィット」となるのです。
写真 薫りのいい木の家「大黒柱の田の字プランの家」(天野彰)>
2 木は活きている
あれよ、あれよと言う間にトランプ政権が生まれました。世のそうなるべきだ、だれもが時のイデオロギーでそれが好ましいと思って選ばれた今までの大統領とは違い、政党も、長きにわたる人種差も、ガラスの天井と言われる男女差でもなく、まったく違うイデアで、まるで血液型か遺伝子差の様な本人も自覚さえない不思議な力によって選ばれるのだ、と言う事実に驚いているのです。まるで私たちの家の設計の大きな疑念でもある木の家が欲しいなどと言う、もともと単純で不条理な設計要望の中で、住宅政策を押し進め、急激な住宅開発を推奨し、優遇した行政の規制と企業の生産コスト優先の規格型ユニットハウスやツーバイフォー住宅が当たり前のロジックとなっていることに不満を持ちながら住む居住者たちのようです。考えてみれば一戸建てを持てる人自体を、本来羨やむマンションなどの集合住宅、賃貸のアパート、木賃アパートに至るまでのあらゆる住む人の不満など、その額や広さなど段階は様々なれど、これらのそれぞれが持つ不満を一挙に束ねれば今回のような大きな力となるのかも知れません。だからと言って、すべての家が木の住まいとなるはずもなく、第一なぜ木の家がいいのか。などと言うそれぞれの想いの基本的な確たる正解もないのです。
木の家の良さとは、その構造からは木の持つ撓いと粘りで、木と木を繋ぐ仕口の柔軟な結合伝統技術であり、軸組み本来の単純な柱梁でありさえすれば、数百年以上持ちこたえるものながら、実際の住まいは大壁となり、断熱材で包み込み、防火のためにモルタルやサイデイングで被覆するなど通気が悪くなり、早くに腐朽する危険さえあるのです。
また本来の木が持つ細胞組成が水分を吸放出し、室内環境や住む人に心地良さを与え、実際に醤油など醸造の樽を木にすると、その発酵は自然なものとなり適度な撥水のせいか、上質な旨みのある醤油となるのです。これらの科学的根拠は研究段階でありながらも、事実として木は生きていて暖かさを感じるのです。
写真 ギネスブックに載った500tの醤油醸造木樽|大分県臼杵市(設計:天野彰)>
イラスト 木造軸組みの木と木を結ぶ「仕口」のイメージ(画:天野彰)
しかしながら、こうした組成が防水や被膜塗膜や仕上げ材などで疎外されると木の持つ組成の良さのみならず、かえって木そのものまで腐らせる可能性もあるのです。防火耐火さらには洋風の外装やインテリアなどで、本来の軸組本無垢の「木の家」良さなどなかなか困難なものです。しかしこれが、国内はもとよりアジア各国の富裕層に羨望され、大人気となっているのです。
写真 木造軸組み本瓦漆喰壁、無塗装木の内装仕上げの家|下呂N様邸(天野彰)
写真 老後の裸の桧の家大垣Y様邸(天野彰)
こうした背景から、今改めて軸組みと漆喰壁の本格的木の住まいが求められ、都市では防火制限の及ばないところでは本来の木造軸組み構造の「木の住まい」が可能であり、木材が組成を損なわず不燃となれば裸の木の家が都市にも建てられ、高層マンションやオフィスの内装材や家具にもなり、木の組成を生かした心身ともに快適な空間が可能となるのです。今このような研究や試みが進み、不燃はおろか強化防腐効果も期待されているのです。
3 広く大きな家から狭さを楽しむ家へ
今都心の住宅地に空き家が増え、街は歯抜けのように空き地が増えています。今思えば子育てのため、子どもが成長して出て行ってしまえばいずれ老いの身には広過ぎることになるべき、広く大きな家を求めたのです。マンションで言えば、子どもが大きくなるため、2LDKを3LDKに住み替える。マンションは利便性が一番で、そのために土地は高く家も高くなる。そのため家庭経済は狭くなる。これは大変と郊外のそのまた郊外へと広い家を求め、家族はもとより付き合いが減り世間が狭くなる。
そこで同じ狭い家を狭“苦”しくではなく、苦を楽にする手法、狭楽しいロジックが生まれたのです。
そして今、こうした家は増築することより、減築し、そこに住む家族と住まいの変遷を顕わした人生時計が生まれたのです。アナログの時計盤に例えて見る限り、広く必要な子育て期間は僅か人生の4分の1にも満たないのです。その時の対応さえすれば狭い方が家族は親密ではるかに経済的で,余りある快適な老後の暮らしができると。
イラスト 住まいの人生時計 画 天野彰
今、この減築思想こそがまさしく住まいのさらに都市のひいては地球の住まい方だと思うのです。
300年住み続ける家と減築の手法(イラスト:天野彰)
しかし今、子育て優先の「大きな家」の残骸が全国に蔓延し、都心の住宅地はすでに灯が消え、ポツンと老夫婦だけが住んでいる。まさに老いて寒く、誰も住まない二階の重さに地震が来るごとに怯え、掃除はもとより雨漏りすら直せず。やむなくそれを手放し誰も住まなくなった空き家は800とも900万戸とも言われ、いずれ「空き家」となる高齢者の家はさらにその倍以上とも言われるのです。
うした家こそ現代と違って良質な木の家で、丁寧な大工や職人によって建てられたものが多いのです。残念なことに、くしくも今多くの木の家が放置され朽ちようとしているのです。
4 雅な京都祇園は、匠の技によって建てられた良質な木の家である
かつて東京に住む私たちにとって高根の花とも言えた京都祇園での粋な飲み屋から足が遠のいて、その代わりにパブやクラブのような飲食店が増え、観光化され祇園の雅(みやび)は既に見世物化されていることに口惜しくて仕方ないが、全国的な展開でこれも時代かな?
写真 四国徳島脇町の二段梲の匠の技:撮影筆者(画 天野彰)
その和の文化が際だつ京都の町家までもが外国人に買い漁られていることに大きな違和感と危惧を持つのです。確かにこうした古民家人気はわが国でも古くからありブームにもなって、古い家が解体されると、わざわざ柱梁を探りに来るほどの古民家ブームになったこともありました。その古民家をそのまま移築したり再生して飲食店にしている例も多いのです。しかしその真意は良質な木の家で、丁寧な大工や職人による匠の技で建てられたものが多く、それこそ本物だからです。残念なことに、そんな真意は別としてそれらが興味本位の観光価値があると言うことで、民泊などとして買われ、東京オリンピックを契機にひと儲けしようとするあさましくも一時的なことで悲しいのです。出来れば本質的な意味と意義で再生され、和の文化を継承できることが京都の特異な町家文化の保存となるのです。その真意こそ、柱梁の軸組と仕口の技で、和の骨格と設え(しつらえ)の粋な文化なのです。まさに木の家の再生こそ、すなわち大工の軸組と左官(さかん)による仕上げの妙なのです。それこそ四国脇町(現美馬市)の商家の防火壁の梲の鏝さばきなど、匠の技の妙が際だつものです。
イラスト 住まいの軸組再生と補強 写真 京都町家の骨組み(天野彰)
5 現在の鉄骨造などは、日本の軸組構造がベースとなっていることが分かる
今残る古い家こそ良質な木の家で、大工や職人によって長年に渡り試行錯誤されながら工夫され建てられたものが多いのです。残念なことに、今多くの木の家が放置され朽ちようとしているのです。実はこうした住まいを多く知ると、現代の鉄骨造にしてもラーメン構造にしてもこうした日本の軸組構造がベースとなり、研究熱心であろう欧米の建築家たちはそれまでの積層のアーチからわが国創始の木造の柱と梁の構造のフォームにかなり影響されていることに気付くのです。厳寒と外敵から身を守るためどうしても壁構造が中心の西欧の家も次第に太平な世となり、こうした窓が大きい外壁で、しかも間仕切りが自在な和の住まいに影響されて行き、ドイツのブルーノ・タウトらにユニバーサルプランと言わせたものです。
一方でアーチに始まった積層の大架構のドーム屋根の構造はもっと幅広大架構のトラス構造やさらに進化してスペースフレームフーラードームのような多面体の巨大なドームなどがつくられ、橋梁からあのワイーヤーによる吊り橋となり、そのロングスパンのテンションの大屋根などが可能となるのです。
こうした和の文化をヒントに育ったであろう近代建築に気付き発想した偉大な建築家丹下健三が現れるのです。まるで清水の舞台のようなイメージのコンクリート造の香川県庁舎や広島の平和祈念館さらに鉄骨造の旧東京都庁舎と展開し、その一方で吊り橋に発想した東京オリンピックの代々木競技場、スペースフレームロングスパンの大阪万国博のお祭り広場と日本の建築を世界的にしたのです。おかげでロマネスクからアールデコと半ば彫刻化した石造スタイルは古典となるほどの建築となり。今やヨーロパを代表とする史跡の様なパリ、ロンドンの都市の周辺に近代都市が突如クリスタルリングのように取り囲むなどと言う奇妙な都市形態となっているのです。
しかしこうした都市の保存制御を可能とした市民のセンスに感銘を受けるとともに、わが国をはじめとした新興都市の東京や各新興国の都市のありようなどはまさに目を覆うようなものばかりです。しかしこの混沌とした都市にわが身を置く人々の心には歴史の重みから開放され、制御の必要のない自由な生活?さらにはその混沌を快感として活きているような今の時世を憂える人もまた多く居ることになぜかホッとするのです。
写真 元の本堂の位置右が新庫裏ここまで曳家(天野彰)
私が所属する300年ほど建つ木造の古い寺の建て替えの際、圧倒的多数の門徒が近代建築に反対し、同じ木造の建て替えを希望したのです。しかし新法により都市に木造の新築は不可能となり、基礎からの耐震の構造補強をするリフォームとなったのです。もともと地盤の悪かった土地で数十メートルの杭を打つ必要があるため、まず庫裏(くり)を解体し、その位置まで寺の本堂をそのまま十数メートル移動したのです。敷地一杯の移動でわずか数十センチほどしか余裕のない曳家にまた、伝統的な匠の技と木造自体の強さに感動したものです。
<写真左 曳家して杭を打ち新基礎の土台回り 写真右:曳家で戻し建ちを補正し耐震強化(天野彰)
写真 完成後の本堂お墓が迫る(天野彰)
関連記事
おすすめ特集
人気のある家をテーマ別にご紹介する特集記事です。建てる際のポイントや、知っておきたい注意点など、情報満載!