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2024年12月27日(金)
《子育てグリーン住宅支援事業》新築最大160万円!高額になる建築費でペイできるのか!?
従来の所得税の103万円の壁が123万円までの緩和について与野党決裂か、という話題をはじめ、自民党の小野寺五典政調会長の発言「手取りが増えてしまう」がX(旧ツイッター)でトレンド入りしたりと、話題に事欠かない「令和7年度税制改正大綱」ですが、その前に閣議決定された【令和6年度補正予算案】において盛り込まれた『住宅の省エネ化への支援を強化するための補助制度』について解説します。
2023年5月成立「GX推進法」とは
まず、令和6年補正予算案の話の前に、おさえておきたい「GX推進法」について簡単に触れておきます。
【令和6年度補正予算案】閣議決定前の11月22日に、「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・取得を増やす~」が閣議決定されました。
2023年5月にグリーントランスフォーメーション(GX)に向けた国際的な投資競争加速を背景に、日本でも2050年のカーボンニュートラル実現と産業競争力の強化、経済成長の実現に向けてGX投資を推進させることを目的に、2023年5月【GX推進法】が国会で成立しました。
【GX推進法】とは、今後の日本におけるエネルギー政策の方向性を定めた法案
正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」です。
【令和6年度補正予算案】において、GXの推進に関する取組みとして「建物の断熱性向上や(中略)住宅・建築物における設備の省エネ化の取組を支援することによって、取組を加速する」方針が示されました。さらにエネルギーコスト上昇に強い経済社会の実現に向け、「省エネ性能に優れた住宅の普及を促進するため、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象とした高水準の省エネ住宅の新築、住宅の省エネリフォームを支援する。断熱窓への改修、高効率給湯器の導入を支援する」方針が示されました。
これを踏まえ、11月29日に閣議決定された令和6年度補正予算案に、住宅の省エネ化への支援を強化するための補助制度が盛り込まれました。
子育てグリーン住宅支援事業は、省エネ住宅の新築や省エネリフォーム等に対し補助金が交付
この補助事業において、対象となる補助期間は経済対策閣議決定日(令和6年11月22日)以降に、基礎工事より後の工程の工事着手したものに限ります。予算がなくなり次第終了となるので、検討中の方は家づくりの要望をはやめに固めることをお勧めします。
【国土交通省・環境省】(令和6年度補正予算案 1,850億円)
省エネ住宅の新築の場合
GX志向型住宅の場合=160万円/戸
ZEH基準を大きく上回る省エネ性能を有する住宅が対象となり、補助事業名称の「子育て」と関係なく年齢制限はありません。
GX志向型住宅の要件は以下の通りです。 |
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断熱等性能等級「6以上」= HEAT20 G2以上 |
再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」 |
再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」 |
長期優良住宅の場合=建替前住宅等の除却を行う場合:100万円/戸
上記以外の場合:80万円/戸。高耐久・高耐震・高省エネ性を備えた住宅が対象となります。
ZEH水準住宅の場合=建替前住宅等の除却を行う場合:60万円/戸
上記以外の場合:40万円/戸。年間の一次エネルギー消費量がほぼゼロの家が対象となります。
住宅の省エネリフォーム等の場合
省エネ改修:高断熱窓の設置
<環境省:断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(令和6年度補正予算案 1,350億円)>
要件 |
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補助金は、断熱改修工事を行う事業者の申請に基づき、住宅所有者に補助金全額が還元されることを条件に、当該事業者に対して交付。 |
高断熱窓(熱貫流率Uw1.9以下等、建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるもの等、一定の基準を満たすもの)への断熱改修工事に対して支援。 |
工事内容に応じて定額を交付。 ※補助率1/2相当等 1戸あたり最大200万円 |
省エネ改修:高効率給湯器の設置
<経済産業省:高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金(令和6年度補正予算案 580億円)>
要件 |
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一定の基準を満たした高効率給湯器を導入する場合、機器・性能ごとに設けられた定額を支援。 |
寒冷地において高額な電気代の要因となっている設備(蓄熱暖房機や電気温水器)を一新するため、高効率給湯器の導入とあわせて、こうした設備を撤去する場合には、加算補助。 |
補助金は、給湯器導入を行う事業者等の申請に基づき、消費者等に補助金全額が還元されることを条件に、当該事業者に対して交付予定。 |
省エネ改修:既存賃貸集合住宅向けエコジョーズ等取替
<経済産業省:既存賃貸集合住宅の省エネ化支援事業(令和6年度補正予算案 50億円)>
要件 |
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既存賃貸集合住宅において、従来型給湯器から一定の基準を満たしたエコジョーズまたはエコフィールに取り替える場合、機能ごとに設けられた定額を支援。 |
補助金は給湯器の交換を行う事業者等の申請に基づき、賃貸オーナー等に補助金全額が還元されることを条件に、当該事業者に対して交付予定。 |
補助額は[追い焚き機能なし]は5万円/台、[追い焚き機能あり]は7万円/台として、これに工事内容によっては追加の補助(今後公表)。 |
省エネ改修:開口部・躯体等の省エネ改修工事
<国土交通省:子育てグリーン住宅支援事業(令和6年度補正予算案 400億円の内数)>
要件 |
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住宅の開口部・躯体等に対する一定の断熱改修や、エコ住宅設備の設置などの省エネリフォームを行う場合、工事内容に応じた定額を支援。 |
補助のメニューとして「Sタイプ」及び「Aタイプ」という2つの区分を設け、それぞれ補助の要件を定めて支援。 |
Sタイプ:必須工事※3種の全てを実施 上限:60万円/戸 |
Aタイプ:必須工事※3種のうち、いずれか2種を実施 上限:40万円/戸 |
※必須工事:開口部の断熱改修、躯体の断熱改修、エコ住宅設備の設置
その他のリフォーム工事
<国土交通省:子育てグリーン住宅支援事業(令和6年度補正予算案 400億円の内数)>
住宅の子育て対応改修、バリアフリー改修、空気清浄機能・換気機能付きエアコン設置工事等を行う場合に工事内容に応じた定額を支援([1]のメニューのうち、一定の工事等を行った場合に限る)。
あわせて、以下の区域は原則補助対象外となります。お住まいの自治体ハザードマップなどで、該当の地域が公開されています。
土地から購入してマイホームを建てる、現在の住まいを建て替える場合でも以下の4つが建築予定地でないことについて、必ずチェックしておきましょう。
対象外区域 |
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「土砂災害特別警戒区域」 |
「災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域又は地すべり防止区域と重複する区域に限る)」 |
「立地適正化計画区域内の居住誘導区域外」 |
「災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域又は浸水被害防止区域)内」 |
国土交通省・環境省の「子育てグリーン住宅支援事業」については、Webページにも掲載されています。(こちら)
募集要項など詳細決まり次第、国土交通省・経済産業省・環境省から順次公表されます。
性能向上で高額になる建築費だけど、160万円の補助金でほぼ補填できる!?
さて、ここまでは子育てグリーン住宅支援事業の新築とリフォームの制度内容を簡単にご紹介してきました。
その最大160万円の補助金で住宅性能を上げる工事をした場合に、どの程度まで補填できるのか、ざっくりと調べてみました。
月々の電気代が7万円~10万円近くに!?
この時期は、 たいていのご家庭で冬場の暖房費(電気料金・灯油料金)に悩まされることが多いかと。
少し前に流行った電気式床暖房、いまでは絶滅危惧の蓄熱式暖房機&電気温水器、広いLDKや吹き抜け。。。こういった家では、電気代が月7万円から10万円近くになるケースもあるそうです。
となると、住宅性能、特に断熱性能が高い住宅への興味がわいてきます。
住宅性能のうち「断熱性能が高ければ高いほど、快適な室内環境で過ごすことができます」とうたわれると、来月以降の電気料金の請求書をみるたび、思わずすがりたくなる気持ちもわかります。
HEAT20 G1・G2・G3グレードとは何か?
さて、最近よく話題に出ている「HEAT20」とは、正確には「一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」といい、2020(令和2)年7月に設立されました。
「HEAT20」が団体として掲げる目標は、「明日の日本の住まいの方向性を示し、技術を具現化し、それを促進するための提言をすること」です。
長期的な視点に立ち、地球温暖化問題やエネルギー問題への対策として住宅のさらなる省エネルギー化を図るために断熱性能に着目。省エネ基準の地域区分ごとの代表都市において、住宅シナリオを実現する外皮性能の水準値を定めています。
この「HEAT20」が認定する断熱の基準に、G1・G2・G3というグレードがあります。グレードが高ければ高いほど住宅性能が高性能になるので、以下のメリットがより体感できます。
メリット |
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冬は暖かく夏は涼しい家になる。 |
室内の気温を一定に保てる。 →脱衣場やトイレなども寒くない。 |
冷暖房費を節約できる。 |
ヒートショックの危険性を防ぐ。心疾患などのリスク軽減の科学的裏付けもある。 |
デザインの幅が広がる。=吹き抜けやリビング階段なども冷暖上、不利なく設計できる。 |
地球環境にやさしいため、余裕で2025年の《子育てグリーン住宅支援事業》に該当。 →GX志向型住宅相当=160万円の補助金 |
これから家を建てるのであれば、「HEAT20に対応した家を検討する」 という考え方は王道とも考えられます。でも、 HEAT20に該当する住宅は決してお安くありません。
最大160万円の補助は、仕様変更にかかる差額ギリギリ?
高い断熱性を持つHEAT20の家。しかし、通常の家よりコストがどの位あがるか。 断熱材や気密処理など、残念ながら各社の施工技術などによりコスト上昇幅が異なることは否定できません。
一般的には、G1・G2・G3とグレードが上がるごとに、目安として160万円~170万円程度アップ(35坪の場合)することを想定しています。
坪単価に置き換えると、グレードによる差額は5万円前後の違い。※申請にかかる手数料は別途
グレード1段階の差で160万円程度の差額となると、もともとの仕様がG1仕様(ほぼ断熱等級5相当)とすると、いわゆるGX指向型住宅の(ほぼG2相当)では、ほぼ160万円~200万円程度の価格アップ。
もしかすると、補助金で相殺できるかもしれないという期待が持てます。
これくらい性能が高い建物になってくると、 首都圏であれば寒いと感じることはほぼないと言い切れるかと思います。G2以上の性能であれば、入居後に寒い暑い、結露するといった悩みもほぼなさそうです。
冬用の寝具やコタツ、ファンヒーターなどの暖房器具も不要になるので、かさばる冬物寝具や暖房器具の収納スペースを削ることができるのも、大きな魅力です。
建築コストは高くなるものの、昨年までの事例を踏まえると、各自治体の住宅性能向上を目的とした補助金とも併用できそう。たとえば【東京ゼロエミ住宅】と併用できると、補助金は320万円近くになります。長い目で見れば回収できるし、 何よりも住んでいる期間ずっと心地よい。
家は高くなったものの、住宅性能にどこまで投資しても良いのか。
悩みどころではありますが、これだけ補助金が充実していることには、何か裏があるのでは?とお考えになる方もいらっしゃるかもしれませんね。
検討しているご自宅や賃貸物件の新築・リフォームが《子育てグリーン住宅支援事業》の対象になるか気になるみなさまは、ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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