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建築家 天野 彰 「狭楽しさ」わが家が街の本屋さんに

はじめに

前回今の住まいの間取りを溶かし、さらの白紙に戻し、新たなわが家を創ると言うお話をしました。
今でこそスケルトン・リフォームなどと言われているようですがこんなお話を50年以上も前から提唱をしている建築家などたぶんどこにもいないだろうと思います。しかも建物づくりのお手伝いを60年もやっていますと、住まいや建築がわかると同時に家族がわかり、人間がわかり、世相が分ると言う風に、うるさい爺のようで、このような不躾な意見も、さらには見えない未来まで勝手に予想できるようになる。しかし住まいは面白いのです。住まいを建て、リフォームなどのプランニングをしていると、人や世相の変遷も見えてくるのです。

パンデミックのクルーズ船中の防疫レイアウトと生活

あのパンデミック初期の時も横浜のみなとみらいに居て、停泊し慌ただしくしているダイヤモンド・プリンセスを遠目に見て、船中の騒動と旅客の恐怖が手に取るように見えたのです。
特に汚染ゾーンの区割りレイアウトに医療従事者から意見を求められても、火災や防煙区画のレイアウトのようなイメージを伝えることしかできず、しかも何層にも吹き抜けている巨大な空間で、そこを避け局所的に防火区画のようにシートで目張りするしかできず完璧なものとは言えなかったと言う。

しかしなによりも、未知のウイルスが故に船中の乗客や多勢のクルーの恐怖心と次々発病する感染者の隔離と家族の分断、長時間にわたり閉じ込められる乗員乗客3,700人以上が刻々と伝わる報道に煽られパニックを起こさないかと恐れたことだったと言う。結果感染者700人余、死者13人(のちに1名、主に高齢者)と言う。

こうして国内で流行は感染者3,380万、累計死者13万2,000人。世界ではなんと公式700万人が命を落とし、さらに関連死者数は倍の1,500万人以上ともいう。その後医療機関をはじめ飲食業などあらゆる業界が疲弊し、国内で推定累計17兆円、世界では実に1,000から1,500兆円に上ったといいます。

改めて住まいさらに医療機関などの柔軟レイアウトと構造

以来住まいはもとより職場さらに医療機関における防災は、防火防煙さらにこうした感染症や花粉対策などの防疫、さらには最悪の場合の建物内隔離区分など必要となるのかも知れません。その場合は防火区画を含め改めて柔軟な安全レイアウトが必要となります。

筆者の事務所による多くの老人施設や医療機関のレイアウトは、入所者症例を区分し、グループ化し看護単位と連動し、何かが起きた時はその区分内における基本的な生活や医療を維持し、かつ隔離を行えるようにしていたのです。
今回のコロナの時も区分がしっかりでき、フィルター換気個別空調に勤め、明るく採光することで開放感を与え、感染隔離や避難もできたという。これは単なる防火や防疫区画でなく、普段からの看護単位と症状に合わせ連動し区分することができたと言うのです。平常時は何ら変わらぬ開放的なプランでありながら、見えないグルーピング・レイアウトをしていたのです。

三層各階個室3グループ+二層多床と特室グループレイアウトの老人保健施設

三層各階個室3グループ+二層多床と特室グループレイアウトの老人保健施設
三層各階個室3グループ+二層多床と特室グループレイアウトの老人保健施設

普段は開放的な二区画二層の計4区画のグルーピング・レイアウトの老人保健施設
普段は開放的な二区画二層の計4区画のグルーピング・レイアウトの老人保健施設

今の3LDKに面積を使わず5~7,000冊の本棚

そこでわが家のお話になりますが、改めて感染症対策とし、玄関ホールに粘着マットを敷き、玄関と室内の間を厚手のビニールシートで隔離し、そこに除菌さらに換気扇も調達し室外に向けて扇風機をまわしたものです。
改めてわが家を観てみると、なんともありふれた3LDKのプランで、そのまま住んでいたものだと思うのです。できれば玄関にクロゼットとのような小さな空間があるだけで前室代わりになり、多少内部が狭くなろうとも間仕切りを壊し新たなプランを考えるのです。

図のような一般的な3LDKのプランの間仕切りの壁を見てみます。するとその総延長が10mほどもあります。なんと、これは厚さ10cmほどもある“高価”なスペースで、70m27,000万円のマンションなら“空洞の間仕切り”だけで1m2すなわち100万円損なのです。
これはもったいない!これらをすべて取り外し、その跡に天井までの10cmほどの奥行の本棚にしてしまうのです。するとなんと、3LDKの住まいに10mほど10段に約5~7,000冊もの単行本が収まるのです。すべてを本棚にすれば街の小さな“本屋さん”です。しかも今までの床面積の少しも減らすことなくです。

写真のように厚さ10cmの壁に本やDVDなどをぎっしり収納し、扉を付ければ壁で、しかも巨大なホワイトボードとなるのです。さらに一部を写真のように扉を開けてライテングビュウーロウとすれば、厚さ10cmの書斎もできるのです。

イラスト:3LDKの中に本棚になりそうな壁が10mもある?!(図:天野 彰)
イラスト:3LDKの中に本棚になりそうな壁が10mもある?!(図:天野 彰)

写真:約3,000冊単行本、扉を閉めると巨大なホワイトボード/しかも一部は厚さ10㎝のライテングビューロウにもなる(設計アトリエ4A)
写真:約3,000冊単行本、扉を閉めると巨大なホワイトボード/しかも一部は厚さ10㎝のライテングビューロウにもなる(設計アトリエ4A)

この壁だけで約3,000冊の単行本が収まり、扉を閉めると巨大なホワイトボードとなるのです。しかも一部は厚さ10cmのライテングビューロウ。
こんな考えで前回お話の今の家に無造作に置かれているすべての家具や家電をこの本棚の奥行を広げ、天井までこの間仕切り壁面いっぱいに立体的に収納棚にし、人が居る空間を少しでも広げるようにするのです。
これは新築の際と同じで、壁イコール収納の考えで新たな間取りをつくるのです。もちろん重要な構造はその中に上手に取り込むことです。

住まいや医療療養施設はこうしたマジックのようなレイアウトが大切で、間仕切りは極力取り去り、すべてを本棚にしてしまうほどの柔軟性をもつことです。さあ、小さな書店でも開きますか?
イラン動向はいまだ微妙ですが、ナフサも石油も調達されていたそうで、騒ぎ煽ったマスコミと一部メーカーと中間による買い溜め、出し渋りはどうやらなさそうで、遅れた住まいや住器の施工を取り戻したいものです。

次回は「狭楽しさは時間も多重に贅沢に」です。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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