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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 わが身わが家を守る2S+3Fとは

はじめに

あの酷暑の中で起こった熊本地震、水も電気も無い息の詰まるような被災の夏から突如、秋雨前線とは名ばかりの豪雨がこれでもかとばかりに連日各地を襲い多くの被害を出しました。そして十一月に入ったばかりの今、まるで真冬のような寒さとなっているのです。もう異常などと言う言葉にも嫌気がさす昨今ですが、まさしく防災の理念とは “人民”を守る街や国家の首長の責任であり義務のはずです。都市の耐久年数から見た治水土木、交通網の橋やトンネル、老朽高架の根本的なやり替えも急務です。

自身で身を守る2S+3F

コラムやエッセイで常に申し上げてきましたわが身を守るセルフディフェンスと超高齢化社会でのセルフサポートの2つのSこそが改めて最重要な時代となっているようです。
ますます混沌とする都市生活や社会情勢の中では一人ひとりの意識が求められる時代なのです。地盤は安全か、免震ゴムで家全体を浮かせ、ダンパーによって揺れを抑え制震させ、震度7が何回来ようとも耐えられる家?とかが持てはやされ強度や耐久性ばかりに関心が行きます。しかし肝心の免震ゴムが何年持つのか。メンテナンスは一体だれがするのか?なによりもそれがために住む側がその時の避難方法などがおざなりになっていることではないでしょうか。

「減災」こそセルフサポートのソフトウェア

「あのような地震が来たらもうだめだ!」と、誰もが自信を無くし、諦めてしまいそうですが、何よりも生きることが大切です。生きてこそ家族や仲間を助けることができるのです。
この先も東南海や首都圏直下の巨大地震や地震のおそれもあります。それらすべてに対処した防災などを考える前に、まず自分がいかに生き残れるかを考える「減災」です。「減災」こそ、わが身を守りサポートする、重大なソフトウェアなのです。あの東日本の悲惨な原発事故でも、予備電源を低い海側に配置して失うなど建築の専門から見ても明らかに設計の不備であり企業や関係機関、行政の責任とも言えるのです。これこそ巨大な堤防を造るハードよりもこうした何通りもの予測ケースを考えるソフトウェアも大切なのです。

自身で活きる3つのフリー3Fと3防

災害に対して筆者はかねてより避難所に行く事も困難な老人たちの多くが在宅で避難ができる耐久性がある究極の「防災性能」と、経年変化を早める腐朽菌やさらにコロナ菌などの室内への侵入を食い止める「防菌性能」さらに老いが進む超高齢社会で転んでケガをしない “老いを進めない”「防老性能」の“三つの防”の「3防建築」を提案をしています。
それこそが3Fで、その第一、第二のFがメンテナンスフリーとケミカルフリーのFです。わが国の住まいの最大の敵は湿気です。あらゆる部材が湿気で傷むといっても過言ではないのです。そのための湿気対策として塩ビなどの化学素材や防腐剤が多く使われます。このためかえって住む人の健康を損ねかねません。

そこで効果的なのがリフォームや新築の際、室内の壁や天井仕上げを極力珪藻土や炭などの自然素材や塗り壁にするのです。既成品の珪藻土ボードや各種の炭ボードやクロスなどもあり、長期間の調湿作用にも優れ安定した湿度を保ち、しかも空気中の有害物質や臭いなども吸着してくれるのです。こうした自然素材は経年変化もあまりなく飽きもありません。壁のリフォームが難しいときは、ドアやふすまの両面を珪藻土ボ-ドにするなども効果的です。

子ども部屋の壁を珪藻土ボードのふすまに(設計; アトリエ4A)
子ども部屋の壁を珪藻土ボードのふすまに(設計; アトリエ4A)

そして第三のFがバリアフリー

這ってでも自立して活きる家を筆者は提唱して来ました。歩けなくなったら車いすではなくベッドからトイレ、さらには浴槽へと自分の手の力で腰をずらして移動するベンチ式の水回りや、そのまま浴室の洗い場のスノコまで這って行って寝たままシャワーを浴びる、自立を考える姿勢です。

いわば生活自体がリハビリで、厳しい老いの時代を元気に活きる意識を養うことなのです。これにより意気が高揚し、介護に頼るだけではなく、住む人自らがわが身の症状に合わせ工夫し、さらに障害バリアを乗り越えて自立の生活をするセルフ・ケアができる住まいづくりです。そのためソフトで温かい仕上げ材を使用し、AI時代の通報センサーなどのセキュリティシステムなど、あらゆる安全策を取りながら自立した生活をするのです。こうして一日でも長く“わが家で楽しく活きて”行くことが2S+3Fなのです。

ベンチ式トイレとさらに浴槽までずらして動く(R宅; アトリエ4A)
ベンチ式トイレとさらに浴槽までずらして動く(R宅; アトリエ4A)

次回は『わが身をどう持たす?ロコモ・サルコ・フレイル』です。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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