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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 10%の消費税アップで建築コストがメタボになる?!~本気で「住まい」の消費税を上げる?!

1 10%の消費税アップで建築コストがメタボになる?!~本気で「住まい」の消費税を上げる?!

いよいよ来年の4月から消費税アップとなりますが、そこで建築家や施工者たちと消費税10%(とりあえずは8%?)について話しをすると、そのほとんどが「今の5%に3%のアップでしょ」とあっさり。なるほどあきらめムードなのか?しかし建ててそこに“住む人”や耐震リフォームをして営々と消費税込のローンを払い続ける人や、在宅の高齢者たちは一体どうなるか?などという懸念や議論とはならないのです。この話しを病院を建てる医師たちにすると怒り心頭で、「医院や入院施設に消費税をかけると言うのはまさしく患者の医療費に消費税をかけるのと同じだ!」と言うのです。さらに「実際には5%の消費税の段階で医療費の原価は既にアップしている」とも、医院の建築費、医療器具さらには薬剤などの消費税のすべてが医療費負担となるからで、「これは医療の冒涜だ!」とも。

確かに5%の消費税となったときは結果、総建築コストが30%近くアップした経緯があるのです。そのときはバブル経済のせいだとか、あるいは“駆け込み”が多かったからだなど、多くのご意見をいただきました。そこでその当時の建設コストの内訳を詳しく調べて見ますと、この各段階での下請けや下職ごとに挙げられる「見積もり上の消費税」が、建て主の手に渡るまでにあらゆる材料や部品の単価、工賃、運賃に至るまで、その見積金額に経費や儲けを足して、さらに消費税を何通りにも累積加算されていたことが分かりました。今度は一体どれだけ割高となるのでしょう。

このことはこのコラムでも2012年の4月頃に消費税増税で“建設コストが30%も上がる”と衝撃的なお話をしましたが、なぜかあまりご理解を得られなかったような気がします。

そこで改めて「建築発注と税の加算の仕組み」を仮に消費税が10%にアップしたのときの積算例を模式図を交えてお話します。単純に100万円相当の10項目の下請け工事見積りがあるとして、その一つの100万円だった建具工事の内訳は、サッシのアルミの原料原価+10%、型代+10%、その作業費+10%、ガラスの原料などに各10%、その加工費の10%、それらの組み立て費10%、そして現場取り付け費10%、その間のあらゆる運搬費光熱費に各10%、これらの消費税込みの見積もり費に次々経費や運搬費が加算され、最終の元請への見積書ができるのです。それはまるで消費税が複利計算のように累積されて、建具屋さんの見積は消費税がないときの100万が、元請の施工業者に上がってくるときには原価が約120万円ほどとなりさらにそれに+10%の消費税加算で、結果は実に132万円!となるのです。

これらが、基礎、木工事、設備、キッチン・・・とそれぞれ100万だった工事費が[32万円ずつ]増えて、その見積原価の合計は1,320万円となりそれに施工者の経費+管理費が加わりその合計にまた+10%の消費税加算となるのです!なんとこの段階で1,500万円近く、実に50%アップ!?に。これが建て主が払う施工金額となるのです。税制上では、確かに「消費税はすべての事業者ごとに差し引き還元されて消費税はそのまま徴収しません!」と言い、各業者、各メーカーの税負担は仕入れの際の支払い消費税分が差し引かれてさほどの額とはなっていないはずですが・・・、実際の見積書や請求書には消費税はそのまま残り、それがあえて差し引かれることはありません。

まるでメタボのように残る消費税の量
イラスト:まるでメタボの体脂肪(赤色)のように残る消費税の量(画:天野彰)

イラストの模式図の赤色のように、見積りの基礎となる各工事費の原価の100万円が、既に雪だるま式に消費税込みの数値となっているのです。まさに表面には表れない体脂肪のような赤色の消費税があちこちに隠れ、まるでメタボのような見積り金額となっているのです。これはあらゆる製品の製造過程でも同じですが、特に無数の下請けや下職の積み重ねによる建築工事では、この赤色の消費税額がそのまま雪だるま式に累積加算されてしまうのです。だからと言って元請の施工者も各下請けの支払いに消費税を差引いたり、支払わない!などとは言えません。結果、建て主の手元の見積金額にはそれらがまんべんなく配分された単価となるのです。

このことを行政サイドや建て主方に何度も説明するのですが、なかなか理解されないのです。この値上がり要因の現実を知って政府はもとより、各建築関係者、そして私たち建築家も消費税についてもっと真剣に考え、せめて生活をするための家づくりだけには消費税を掛けないか、先進各国の例のように大幅な軽減か免税措置をさらに頑張る必要があるのです。これこそが家づくりに携わる人たちの務めと思うのです。

住まいは建築コストを回収できる事業用の建物とは違い、消費税は“1円たりとも還元されることはない”のです。ましてや見積り上残った消費税で“メタボ”となったコストに建て主はさらに消費税を支払う必要はないと思うのです。さて、果たしてさらなる消費税アップで、また慌てて駆け込み着工をして、またまた建設コストを引き上げることになるのでしょうか?

2 住まいづくりの現場での建築家の姿勢とは

今まで長すぎたデフレ状態にあった建設業界は今や建材の生産調整や職人の廃業などで物も人も減少し、すでにインフレ状態となっているのです。ここに駆け込み?の急激な需要があったとしてもまさしく過剰受注となるのです。それこそ一部の人を除いてすべてが飽食の時代のようで、特に欲しいものがないように思えるのです。そのすべての人たちが「あればいいと思うのは“現金”」だと言うのです。それもかつてのように何か欲しいものがあってお金を貯めるのではなく、とにかく“現金”を持っていたいだけと言うのです。それがこれからの不可解な世の中の為であることに間違いありません。そのためなら今よりちょっと良い住生活も、あるいは耐震強化などは極力最低限のことで済ませたいと思っているのです。

その代りすべてのことは、できるだけ買わない!行かない!食べない!遊ばないと言うのです。そんな「ないないづくし」の中での今回の的外れの消費税増税に誰もが唖然とし、幻想的なオリンピック景気にも冷ややかながらも少し期待し、同時に被災地で苦労されている人々に誰もが胸を痛め浮かれる気にもならず、心の底では止まったままでいる原発をドイツのようにすべて廃炉にしたいと思っているのです。これは私と家づくりやリフォームをともにしている建て主さんや大工さんだけの意見なのかも知れませんが。

高層住宅
写真:雨後の竹の子のように建つ高層住宅(画:天野彰)

「住まいの消費税問題」は迫りくる圧倒的な数となる、所得の望めない高齢者たちにとってはこの先の生活も医療も死活問題となり、必要なバリアフリー対策さらには耐震補強もままならず、頼みの高齢者住宅などの家賃の高騰など、住まいはさらに劣悪危険な状態となる可能性もあるのです。政治・経済の動向はともかく、こうして生活に密着すべき住まいづくりの専門家である私たちはもっとこの生活者たちの本音を訴え提案すべきだと思うのです。ちょっとシリアスなコメントとなってしまいましたが、たぶんヨーロッパの建築家仲間に、「あなたたち日本の建築家は海外ばかりに目を向けてファッションデザイナー気取りで居るけれど、生きること(復興や原発処理など)の大切さをもっと社会に訴えるべき!」 の叱咤に啓発されたのかも知れません。

3 もっとわかりやすい家づくりのコスト!

住まいづくりでの消費税増税については家づくり、建築の当事者や建て主方の実情や意見などをもっと丁寧に聴収し、また建て主や住宅供給者たちの猛烈な反対があってっも、と思うのですが、どうもこのままずるずると8%から段階的に10%に移行してしまいそうな状況となりました。

消費税アップを軽減するための各種補助金やローン金利などの優遇処置がなされても、肝心の建築コストが肥大してしまってはどうにもならないのです。

今こうした状況を建築家たちがあまり深刻に考えていないことも気になりますが、そこで改めて現代の住まいのコストパーフォーマンスを考えてみますと、なんと建築本体のコスト、設備その他住設を除いた、基礎、土台、柱そして梁、小屋組に屋根と外壁の仕上げ、サッシや建具など家の躯体のコストは、なんと建築総コストの2分の1にも満たないことが分かるのです。

後は電気設備、給排水配管、さらには冷暖房そしてシステムキッチンや浴槽や造り付けの家具、その他各種設備機器が加わるのです。総コスト3,000万円の家であれば、雨風を凌げる家の躯体はわずか1,500万円以下なのです。これを1坪(すなわち3.3m2)当たり30万円とすると、なんと!その他、設備機器家具などを加えさらに坪当たりの躯体コスト30万円が加わりこれに仮設や外構さらに諸経費が加わるとそのまま4,000万円の家、坪当たりなんと80万円の家となるのです。

私は家の見積金額を査定するとき、このように何もかも含めての坪単価を考えないようにしているのです。こうした家の“余分な部分”を一切取り除いた肝心の部分(躯体)を試算し、そこに一般設備(トイレ・バスなど必要不可欠な設備)、に冷暖房設備さらに、システムキッチンや給湯システム床暖房などの付加仕様をチェックするのです。加えて二重サッシや造り付けの家具や特殊な内装や外構などの提案をそれぞれ詳細に観て、段階的なコスト比較もするのです。いわば躯体に対するトッピングのような見立てとするのです。しかしこれはハウスメーカーなどの基準プランに付加される“オプション”仕様とは違うのです。あくまでそれぞれの価額と機能を見極めて総費用と照らし合わせるのです。

 このことはリフォーム提案でも同じことが言えるのです。

各工事別に見積もるのではなく、各部屋各部位ごとのリフォーム内容を表しその見積りをを各部に張り付けるのです。この総和が見積額となりその予算調整は各部ごとに仕様を落とし納得しながらさらに総額を出すのです。図面にそれぞれを表現した“観”積り書にするのです。

住まいの各部費用を工事内容と照らして分解して観る
イラスト:観て分かる見積書(画:天野彰)

このことは同時に建て主やリフォームする人にそれぞれの価額の意味とその差について理解して決定を促すことができるのです。さらにそのそれぞれを合計した総額を納得して施工契約をするのです。
これなら互いのトラブルもなくなり、住む側も長年生活してからその本質を知ることになるのです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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