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建築家 天野 彰 さあ、家を建てよう!(5) 時を味わう“スローハウス”

はじめに

自粛時間が長くなり、自身そして家族本来の生活を取り戻したとも言え、ゆっくりと時の流れを感じ、そして未来も見える家となったように思えます。今改めて「スローハウス」の時代と言えるのです。

量産住宅ではない、味わい深い家

かつて量産住宅が「ハウス」から「ホーム」へと用語を変えた時期がありました。いわく、ハウスは「ハード」でホームは「ソフト」だと言うことでしたがそれは名ばかりで、実際は設備やインテリアなどを覆っただけで、やはり生産者側の生産効率や販売利益を優先したものでした。

イラスト:手と手を繋ぐ伝統木造の仕口の妙、スローハウス(画:天野彰)
イラスト:手と手を繋ぐ伝統木造の仕口の妙、スローハウス(画:天野彰)

これに対し柱と梁(はしらとはり)の木材の吟味から部材を選び、仕口(接合部)の一つひとつを削り出して、手づくりで造るあの伝統的な工法の家づくりで いわく“在来木造”の家づくりこそ、スローフードならぬスローハウスと呼ぶべきものなのです。なるほど造るのに効率が悪い、その品質にもバラツキもある。しかし経年変化にも耐え味も増すのです。

非効率的な過程があるから個性的な家ができる

写真:ギネスに認定された500トンの世界一の木の樽(写真:天野彰)
写真:ギネスに認定された500トンの世界一の木の樽(写真:天野彰)

古い話となりますが、60年ほど前出会った私の初めての建主であり、私の処世作の家ともなった大分県臼杵市の小手川道郎氏の家があります。醸造家の氏は“うまみ”のあるおいしい味噌や醤油をつくるのにあえて木の樽(たる)を使い、そして時間を掛けてじっくり醸造する。効率は悪いが、「“うまみ”と言う利益を最優先する」この部分だけは徹底して非効率的な手づくりで行い、吟味された無垢の素材を使うと言う。
のちに私どもが手掛けた醤油工場にはギネスにも認定された世界一の木の樽もあるのです。

私はこの醸造という生きものが住むと言う考えを学び、住まいづくりに活かし、今も病院や老人施設などの建物づくりにも活かさせていただいているのです。それこそまさしく “スローハウス”です。これはリフォームも同じことで本物の素材感で “感傷的な要素”を見落とさないのです。

今あえて“ものづくり”が浮上しているのは “つくる過程”を大切にしようと言うことの顕れでその過程で色々な発見やアイデアも生まれ、個性も生まれるのです。

桶板や底板を利用した“酒樽の家”

写真:処世作”酒樽の家“(小手川様邸 設計:岸崎隆生氏+天野彰)
写真:処世作”酒樽の家“(小手川様邸 設計:岸崎隆生氏+天野彰)

このスローフードを提唱し、自らも古い酒樽や醤油樽の桶板や底板を利用して造った“酒樽の家”まさしくスローハウスに住んで、スローライフを実践された小手川氏の家には今もご子息家族に住んでいただいているのです。

何よりもこうした生き方こそが長い先の人生や家族を見つめ、慌てることなくゆっくりと住むことと言えそうです。あえてこの新型コロナはこうしたスローハウス、スローライフを考える良い機会だと捉えてみるのはどうでしょう。こうして家族で長い時間家に居る初めての年末年始。今年はじっくり家に居てよい年を向かられますようお祈りいたします。改めまして「健康住宅」長時間居られて健康を考える家のお話しです。

そしてなによりこの年末年始も関係なく、感染拡大と果敢に戦っていらっしゃる医療従事者の皆様に心より感謝を申し上げます。(天野彰)

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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