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建築家 天野 彰 暑い夏を乗り切る(2)「町の家の風通し『町家』の妙」

○ 今回のポイント 1 祇園祭と虫干し?
○ 今回のポイント 2 都市の暑い家を京の町家で涼しく
○ 今回のポイント 3 なぜ京の町家は涼しいか?家全体が換気扇?

 
 

コロナ禍の今年、あの「こんちきち」のお囃子をやっと聞くことが出来ました。暑い祇園祭の宵山の季節がやってきたのです。

実はこの祭り、わが国の湿気にかかわるのです。

祇園祭と虫干し

「こんちきち♪」のお囃子を聴くあの蒸し暑い祇園祭の宵山の季節は、毎年どさっと梅雨のフィナーレのような大雨があって暑い夏を迎えるのですが・・・。

最近は「経験したことのない」ような、線状降水帯の土砂降りになって各地に大きな被害をもたらしています。

しかしこの後は、熱い太陽がじりじりと照りつける暑い夏になるはずですが、今年はどうでしょう。もともとこの祇園祭の宵山とは、古い 家々がお宝を一斉に蔵から出し、店先や中庭に並べて公開するのです。これが京の宵山 の風物詩となり、多くの人がこの小路に集まってきます。このことは古い家のお宝の年に一度 の「虫干し」でもあるのです。

写真1:やっと巡行祇園祭の山鉾実は虫干し?  (天野彰)
<写真1:やっと巡行祇園祭の山鉾実は虫干し?(天野彰)>

 あの山や鉾は、さらに大きなペルシャ絨毯などの「動く物干し場」のようで街道を晒しながら練り歩くのです。これこそ古人たちの知恵で、お宝をちょっと皆さんにご披露目と言うことでもある合理的な行事と思えるのです。

  まさにじっとしていても額に汗がにじむ暑い夏の京都、正反対に凜として凍てつくような真冬、私はどちらも好きなのですが、京都といえば、やはり夏と言う人が多いのです。

都市の暑い家を京の町家で涼しく

上賀茂神社と下鴨神社の葵祭に始まって、宵山、山鉾巡行から五山の大文字焼きと、都の庶民が一丸となって過去と現在を結びつける夏の伝統的祭事を守っています。

私は暑い季節になると京都の町家の街並みと中庭を思い浮かべます。

前回お話【広い敷地か野中の家】は傘のような壁のない風通しの良い開放的に住めて夏でも風が通ります。しかし、多くの人が街に住むようになると、家々は密集し軒を連ね風通しも悪く、現代のようにクーラーの排熱で暑く、音もうるさくとても開放的には暮らせません。時には大火にも見舞われかねません

そこで迫る隣家との間には中途半端なすきまなど開けず、むしろ燃えない壁で仕切って、敷地いっぱいに家を建てるのです。

このままでは窒息してしまうため、家の真ん中に風抜きと日だまりの植栽、すなわち中庭にしたのです。

これこそが京都の町家です。

各路地から見る街の景観は、連子格子の家々がすきまなく連続し、路地全体が堂々とした重厚感があり、それでいてしっとりとした佇まいを感じさせます。

しかも京都の街は、古い家自体が今も住まいや商店であり続けているのです。

周辺は近代的なコンクリートのビルに囲まれてはいますが、なによりも気丈に伝統的な生活スタイルを守ろうとする住民意識が重厚な京都の街並みをつくっているようにも思えます。それが「京都人」気質とも言えます。

なぜ京の町家は涼しいか?家全体が換気扇?

そこで京都の「町家」のたたずまいを建築的に解析します。

イラスト1:ロ・コ・L字型のプランと中庭(画:天野彰)
<イラスト1:ロ・コ・L字型のプランと中庭(画:天野彰)>

都市の狭い土地ではイラストのように、敷地の真ん中に家をつくって周囲を隙間のような薄っぺらな庭をつくるより、L字やコの字、またはロの字形のプランにした方がまとまった庭となります。

各戸が接するところは民法上の解釈もありますが、外壁を互いが隣地いっぱいの防火壁にすると中庭はさらに広くなり、まさしく京の町家と街並みとなるのです。これで各家は広い中庭で風通しもよくなり街並みもすっきりと涼しげになるでしょう。

かといって、京都は盆地のような土地で風もあまりなくなおさら暑いのです。

実は京都の町家の中庭は平面だけではなく立体的にも風通しの工夫がなされているのです。

イラスト2:町家は大きな換気扇(画:天野彰
<イラスト2:町家は大きな換気扇(画:天野彰>

断面図のように中庭の空気は屋根に当たる太陽の輻射熱によって上昇気流が生じ中庭の空気も共に吸い出すように上昇し、各部屋の空気が中庭に向けて引かれます。

このことは何度もご紹介し、実際にTV番組でも模型をつくり屋根の瓦に強いライトを照射し温め、上昇気流が生じ部屋の空気が中庭に引かれることを線香の煙で見せて放送しました。

実際の町家では夕方熱くなった路地に打ち水をすることで気化熱を奪い涼しくさせ、部屋に取り入れることなどを工夫して科学的に千年以上も暮らして来たことに驚きます。

こうしてみると京都を訪れる私たち日本人もすでに「外国人」の眼となって景観ばかりを観ているのかも知れません。

京都に限らず、今や日本中の旧市街もミニ開発され、人も通れないほどのすき間を開けただけの分譲住宅が建ち並び「庭付き」の一戸建てにしようとするためか、庇もなく南に屋根を尖らせた塔状の家ばかりが林立し、街をさらに暑苦しくもしているのです。

次回は「雨後の家の“目”ンテナンス」です。

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お楽しみに♪

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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