住宅関連記事・ノウハウ
活かすリフォーム 間取りではなく場取り
住まいづくりのお手伝いをしていますと社会や世界情勢のすべてを感じられるような気がします。かつてはそうした世間から逃れて落ち着くところがわが家、そうMy sweet homeだったはずです。それが今日はすべてが影響を受け、しかもインターネットの回線にまみれ拡散され、情報のすべてが家の中に混入して来て、家族はもはやバラバラの時代となっているようです。
1 「間取り」のプランニングから見えて来る世界は?
<写真:メディア的ジャンボテーブルでのホームパーティー(撮影設計:天野 彰)>
前回お話しした、あのLDKの炉端に今家族が“まれに”一堂に集まったとしても、家族は勝手気ままにそれぞれのSNSと繫がり、全くの異次元の社会に存在していて、現実の家族は単なる“リアルな家族の情景”の一コマに過ぎないのかも知れません?
そんな今の家族を各「個」と考えるとその「個」と「個」の間に生まれる空間こそがまさしく真のメディア的空間で、住まいは夫婦、親子の媒体的空間であり、家族がいる「場」となるのです。今こそ住まいのプランニングは、居間や食堂、寝室などの「間」をとる「間取り」ではなく、居間は家族が居る「場」で、テレビはそのための装備?で、ダイニングはキッチンやテーブルがあってそれぞれが食べる「場」、そしてバストイレは用を済ませ、身体を洗う「場」であり、寝れば眠る「場」なのです。
<イラスト:キッチンテーブルを通らないと個室に行けないLDK(図:天野 彰)>
こうして「間取り」はいよいよ人中心の「場取り」へと変貌していくのです。しかしベッドコーナーだけは、ますますリアルな「個」の安らぎの「場」となり個室化するのかも知れません。今やLDKなどはかつての応接間のように、テレビや飾り棚は置物のようとなり、キッチンさえも飾り物になるのかも知れません。まさしく住まいはホテルのラウンジやカフェテラスのような街の一角になるのかも知れません。この先AIやメタバースが進化するにつれ、「個」さえもが異次元の社会や幻覚の世界までへ「覚醒」されかねません。すでに人生や未来さえを間違った方向に狂わされている若者たちや、ひいては国民や経済、政治さえも繰られているようです。
2 IT社会での新たな「食う寝るところ住む処」?!
<イラスト:イラスト:玄関からLDKにある街のスナックカウンター(図:天野 彰)>
果たしてDXが私たち家族の暮らしや人生を本当に豊かにしてくれるのでしょうか?しかし滑稽なのは、現実の建売住宅やマンションさらには規格住宅など今まで同然の〇〇DKいくらの間取りで、ハイテク・タワーマンションでさえもその域を出ないまま売りに出されていることです。
これからのIT社会では住まいはあえて家族それぞれの「食う寝るところ住むところ」とし、家族は互いの「個」を尊重しつつ、それぞれと積極的に交流し、楽しみ高揚する「場」となって行く必要があるのです。まさに新たな“家族のメディア的空間”とし、短時間でも家族間の情報と表情を生の“交流する”「場」に演出するのです。そんな瞬間でこそ子育てはもとより、夫婦で顔を合わせ、互いの表情で安心をし、葛藤もし、そして恋をし、学習し、愉しみ創造し、妄想し、こうして家族の歴史を刻んでいくのです。
筆者はこれをあえて“すれ違いの空間”a life without talkingと位置付け、まるで通り道のような住まいに設計するのです。こうした空間は在宅が進む今日のテレワークでのオフィスづくりにも言えるのです。
こうして今までのLDKは家族の“通り道”にあるような大型のダイニングテーブルや街のスナックのバーのようにするのです。これこそがジャンボテーブルであり、カフェテリアで、ここで家族は勝手にコーヒーを入れたり食事をしたり宿題をするのです。まさに新たなIT時代の「炉端」を創るのです。今のテレワーク時代の職場こそ、この「炉端」が必要となるのです。
次回はこの「場取り」に「時」を加える?です。
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