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2025年3月31日(月)
長生きハウス!高齢化に向けて住まいの減築
前回重大な事故や事件、さらには災害がなぜかこの3月に多いと述べました。が、ぎりぎりのこの月末にミャンマーでM7.7クラスの大地震が起こり、タイ・中国南部へと被害が拡大しています。
またまた数多くの人々が瓦礫の下敷きとなっているのです。しかも今度は大地の大きな横ずれ断層?…と、大地への信頼をなくしそうです。はたして建物を建てることを生業としている筆者までもが、もう地上に家を建てて住むこと、家を持つことなど正しいことなのかと思うほどです。
改めて減築の勧め!そして自身、世界へのSDG's
今、都市の住まいはますます高層化され、建物も大きくなり構造も複雑となっているのです。とりわけ屋根や上層階を支える重量との戦いで、途方もなく大きな耐力と地盤が必要なのです。
こうした中、筆者が40年ほど前から提唱する“増築ではなく減築”は、子育てが終わり、核家族化が進み、さらに便利な都市集中のために限られた貴重な地面がさらに過密となる。わが家も耐力を施すために少しでも軽くする方が住む所をもっと快適にし、冷暖房のエネルギーも軽減する。その分生活をさらに豊かにする。
子どもたちは育って出て行き、わが家には彼らの遺留品だけが残る。使わない二階などを思い切って壊し、老いて少しでも掃除や広範なメンテナンスの負担をなくして軽い頑丈な屋根にする。あるいは家の半分を解体し、そこを貸し駐車場にしたり、思い切って二階建てのアパートを建てて老後の糧にする・・・。
イラスト:減築のイメージ断面(図:天野 彰)
減築して賃貸「契約同居」の実現
減築は何より自身の生活全般のSDG'sです。それは同時に若者たちにも無理に高層住宅に住ませることなく、都市の住宅地に住ませる。何もせず業者に買いたたかれ、高額な建売住宅を乱立にすることなく、今、自力で人生最後の投資をし、わが家を快適に再生し、そこに安い貸室を併設し若者に提供し、子育て支援をするのです。
こうして都市も多くの建物を建てることなく、空き家に苦しむ都市を活性化させ、若返りさせるのです。これこそ真のSDG'sで、都市や社会への再開発ではないでしょうか。
そしてわが家では賃貸契約をした若者との「同居」ともなるのです。この同居は何よりも老いて寂しくなく、いざとなったら使いや助けも頼むこともできる。もちろん子夫婦が返ってくるかもしれません。むろん他人でも隣人として子育ての見守りサポートも可能で、庭を提供し、彼らが犬を飼うこともでき、庭の手入れも頼める。
今、筆者の事務所ではこれらの「契約同居」を不動産屋さんや弁護士と勧め、新たな子育て支援の減築リフォーム活動をしているのです。
写真とプラン:減築して「契約同居」(撮影・イラスト:天野 彰)
さらに伝統工法と職人の育成にも
この筆者の奉仕活動は、自身のためかも知れませんが・・・。この柔軟な住まいの考え方は、今までのこのコラムでお勧めしている「防災ではなく減災」の思想です。この住まいの「減築リフォーム」は小回りの利く多くの大工さんをはじめ職人さんたちを必要とし、失われつつある伝統技術、伝統工法の職人たちの新たな育成にもつながるのです。
スクラップ&ビルドの時代ではない!と言われて久しいのですが、現実は安易な建て替え、再開発ばかりで、いまだにわが家わが街を放置し、結局多くの家が売られ、規格化された建売住宅の乱立となっているのです。
「一億も出してこんなベニヤ板の家か?」で、高額な建売住宅地となり、街は街づくりを担うべき街の人が、再開発事業?と称して、ボロ家やボロビルの持ち主が地権者?などと、まつり上げられ街壊しのスクラップ&ビルドのかたぶを担ぎ、味気のない脆弱なガラスの街をつくり出しているのです。
しかし・・・何よりも大地がこのまま安泰で、支えるインフラが安定し、さらにこの先の経済や紛争の安全保障は保たれるのでしょうか?最近筆者は本気でキャンピングカー一つに“減築”し、安住の居場所を求め放浪して老い先を活き抜こうか・・・?などと思うような気分になって来るのです。
いよいよ55年ぶりの万国博覧会も始まります。はたして人類はこのまま拡大思想を続けて行くのでしょうか?次回は筆者自身の中の“万国八苦”です。思慮深い人もあの時代のような展示やモックアップなどを観て、新しものの“衝動買い”をするようになるのでしょうか?
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