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建築家 天野 彰 「家相」はあるか?(7)~家相は私たちの新しい家を生む?!

「家相」は真の家を思い出させ、まったく新しい家を創る

今までも本コラムにて何度か「家相」についてお話をしてきましたが、今回はまとめて7回ものシリーズとなりました。なぜ私がこの家相にこだわるかはどうも私の生家に起因するのかも知れません。

それはゆうに100年を越す家で、幸いに空襲から免れ、その家で育つことができました。まさに南入りの広い玄関は三和土(たたき*参照)の土間で、玄関の右脇に大きな洞穴があり、そこにもみ殻に包まれたサツマイモやジャガイモなどが保管されていました。その左は店と呼ぶ8畳の畳の間が一段低い上がり縁をはさんであり、その右角に黒光りする一尺角ほどの大黒柱が悠然と立っていました。※三和土(たたき)=「叩き」とも書く。粘土質の土に石灰や苦汁(にがり)などを混ぜ叩き固めた今のモルタルセメントのような土間。

写真:セメントではない三和土(たたき)の土間(天野 彰)
写真:セメントではない三和土(たたき)の土間(天野 彰)

硬く黒い土間は裏の勝手へとつながっていて、勝手には竃(くど=へっつい)があり、そこで薪が燃され釜が煮立っていました。その湯気も薪の煙も皆屋根裏に吸い込まれ梁(はり)や母屋(もや=屋根を構成する木組み)は煤(すす)で真っ黒になって、子ども心に果てしない宇宙のような感じがしたものです。

毎年暮れ頃はその奥の土間の蒸籠(せいろ)で蒸した糯米(もちごめ)を石臼で搗(つ)いて正月の支度をしたものです。

半世紀以上も経った今も不思議に、そのときの湯気の匂い、そして情景を昨日のことのように思い出すのです。特に竃や土間、さらに流しや神棚をいつも清め、お供えをし、手を合わせる祖父母を見て育ち、住まいのあちこちに何か霊的なものが潜んでいるような感じがしたものです。きっと今でもそのことを大切にしようとするのかも知れません。

(左)写真:家相の方位に従い建てたY邸 (右)写真:同、現代の土間と大黒柱と座敷(天野 彰)
(左)写真:家相の方位に従い建てたY邸 (右)写真:同、現代の土間と大黒柱と座敷(天野 彰)

実際に、住まいにはその土地の気候や方位に深く関わることも肌で体験し、物理的な方位だけではなく、不思議な運命的な意味や力も感じたものです。
 あの高松塚古墳の四方に描かれた彩色壁画の白虎や玄武のように、方位は色や地形にも象徴され、家がそうした配置となっていたのです。まさしく南方位は朱雀(すじゃく)で、田畑があり、先は広がり。西方の白虎(びゃっこ)は道で電車も走っていました。黒の北方は亀の玄武(げんぶ)すなわち山で。東方は青の青龍(せいりゅう)の大川でその川の水をひいて大きな水車があったのです。実際にその方位に、そうした色を感じたものです。

まるで不気味ななにかが蠢(うごめ)いているような気もするのです。のこれら各方位が15度ずつ24に細かく刻まれたと住まいの各部位の配置の良否がチェックされるのです。 考えてみれば家も、イラストの「方位盤」のような配置で、トイレは縁側を遠く歩いて行き、湿気る浴室は家の中にはなく、雪が降るような寒い日はとても辛かったのを覚えています。しかしのちに増築してくれた勉強部屋はまさしく辰巳の角でした。効したかどうかは定かではありませんが。

今、二階建ての家やマンションが多くなり、トイレが水洗化され、風呂も排水や換気が良くなり、家相家の解釈もかなり変わってきました。どこまでそうした家相と付き合うか?せめて家相の精神に従い鬼門だけは外して、住まいやすい間取りの新しい家を発想して頂きたいものです。このwebが発行する冊子『余はく』にても家相盤など紹介しています。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
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