住宅関連記事・ノウハウ
家づくりの方法(2)プランニングは「場取り」?
―私たちはどこに住むか?そしてどう暮らすか?今その建てた家に縛られている人がいかに多いことか?と言う大きな疑問があります。―
○今回のポイント 1 日本古来の開かれた家は「家族の本質」
○今回のポイント 2 プランニングは間取りではなく、様々な用途を想定した「場取り」
○今回のポイント 3 柔軟な住まいの実現には「間」と「場」の使い方が重要
壁に囲まれた閉鎖的な家から開かれた家へ
私たち日本人は心情に雨露をしのげればと言った「傘の家」の本音を持ちながら・・・、気が付いたら汎用するベニヤ板やコンクリートの集合住宅の「壁の家」になっていました。
住まいの中も、間仕切りも壁でしっかりと区画され、気密性も高く、冷暖房も良く効く快適な?家となって居ます。反面、家族は密閉され、個室化されます。家族はその間取りによって左右され、しかも高層住宅によってコミュニティが阻害され、夫婦や親子はおろか社会との関係も悪くなることさえあります。しかもそれらは老朽化し、区分所有と言うジレンマに束縛されているのです。
私はこうしたことから、住まいは開かれたものとして、それを極力閉鎖的にかつ固定されたものとせずにプランニングを心がけてきました。なぜなら人は育ち、やがて老い、家族もそれによって変わり、世間も大きく変わっていくと思うからです。なんてことはありません、それこそ古来日本の家の形であり、家族の本質だからです。
【場取り】のプランニングで、自由に使用できる場を配置する
そのプランニングとは、「間」を取る「間取り」とは言わず、あえて家族がそれぞれ住む「場」として「場取り」と言っているのです。
住まいは家族 が一緒に暮らす所です。リビングやダイニングさらに寝室や子ども部屋など、決まった「部屋」の配置、すなわちそれが「間」で取るのではなく、家族それぞれがいろいろなことをする「場」と考え、その場を配置するのです。
家族がそれぞれが生活し、居る「場」で、自分の居場所や持ち物などを置く「場」であり、さらには立場や存在を示す「場」なのです。これらを合わせて配置することが、「場」のプランニングであり、物理的な「間」取りではなく、生活の「場取り」なのです。
<イラスト:「創始の家」と「江戸の裏長屋」の場の家(画:天野彰)>
そして今求められるのは住まいの中の風通しの良さや、台所やトイレ、浴室など、住まいの主要設備は、人の体に例え、肝心(腎)要の重要な「所」と考えるのです。これこそ伽藍や屋敷を建てる際、その項目の縁起に注意を払いながら、「場」や「所」を配置してきました。それこそが「家相」なのです。拙著「建築家が考える『良い家相』の住まい」(講談社刊)の執筆時におおいに学び、その真意に驚き感銘を受けたものです。
柔軟な住まいを作るのに重要な「間」と「場」の考え
建築のみならず「間取り」の「間」とは、部屋ではなく、もっと深い意味の事象で、空間・時間・人間の「間」であり、唄(うた)や舞(まい)囃子(はやし)などの調子の「間」でもありこれがすべての作品に潤いとリズムを与え、まさしく「空」あるいは「無」の間なのです。
(著者:天野彰)
「間」は夫婦の間、親子の間、外界との間、世間との間であり、柔軟な空間です。英語のSpace=「何もない空間」の方が、本来の「間」に近いのかも知れません。そんな不可解とも言える掴みどころのない「間」と「場」を家の形にすることこそこれからの変化にも柔軟に生きて行ける物となるのです。
次回はこの「場取り」の手法?をお話をします。
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