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建築家 天野 彰 家相はどこまで従う「案じた瞬間に家相はある?」

1 約7割の方が「家相」を気にされている

なにやら謎かけ問答のような話しですが、実際の家づくりの場面で、そろそろプランが煮詰まってくる頃になると、なぜか建て主のどちらからともなく「家相」の話しが持ち上がってきます。どちらかの親や兄弟の誰かが気にして発言するだけで家相に影響を受けてしまうようです。このITの現代社会においていったいなぜなのでしょう?家相を気にする人があまりにも多いことに驚き、改めてアンケートでも調べてみました。私が長年担当していたWEB連載で、独自のアンケート調査を行ったのです。その質問はストレートでぶしつけなものでした。が、多くの読者が回答され感想や意見までもいただきました。その内容とは現在の住まいの形と、リフォームをしたい場所。そして「気になる家相」でした。

まずは現在の住まいの形は「家相」だけに、一戸建てなど持ち家の方が総計の7割以上と多く、そのリフォーム箇所や用件は、やはり水回りが圧倒的に多く、その総数は48%で、キッチン18%、浴室16% 洗面トイレ12%と、サニタリーの快適性を求めていることがよく分かりました。

アンケート Q.現在の住まいは? Q.現在の住まいでリフォームした場所はどこですか
アンケート Q.現在の住まいは? Q.現在の住まいでリフォームした場所はどこですか

反対に収納(14%)内装インテリア(9%)と、かつてに比べて少なく、耐震補強リフォームも意外に11%と低かったのです。なんと「なんとなく気になる」を含め、総数で68%とほぼ7割の人が気にしていたのです。さらに驚いたことは60代の人が70%を閉めることは予想通りとして、20~30代の若い世代が70%以上と、意外に「家相」を気にしていることでした。この調査自体がインターネット世代を対称にしていた割に家相の関心の深さを知ることができたのですが、有効回答数が156と少ないことから、機会があれば詳しいアンケートをしてみたいと思っています。

2 家相に従ったプランにやり直してください

家相なんてナンセンス!と、希望のプランも決まったある日、実施設計もほぼ終了するころです。「あのー。“家相”に沿ったプランにやり直せますか?」と突然言うのです。以前からも両親から家相に従え、とさんざん言われていたらしく、それでも「家相などナンセンス!」と突っぱねていたのですが、、今ごろになって家相に従った家に修正してくれと言うのです。今まですべてのプラン構成と設計図面がすべてパーとなってしまった瞬間です。

「ご主人、一体何があったのですか?」と聞くと、なんと両親の言うとおりの家相プランにしなければ、足りない建築資金を出さないと言うのです。経済封鎖です。

家相家の思想などによって、家相は変わる

これは大変と、今までの合理的なプランをもとに「鬼門」だけを避けて修正案として、家族に紹介された家相の専門家に見せてOKをもらったのです。「家相なんてナンセンス」と言っていた若い建て主も、実施設計の費用が嵩んでも、両親からの“経済封鎖”にあえなく屈したのです。

イラスト:経済封鎖 後の変更プラン(画:天野彰)
経済封鎖 後の変更プラン(画 天野彰)

私自身も、近代建築の設計屋として、そのチャンスに、1人の家相家の診断だけではなく、同じプランで、私の知る何人かの家相家のチェックを受けたのです。するとどうでしょう。同じ図面でありながらある人はすべてOKと言ったり、厳しくあちこちを修正させられたりと、その裁量がさまざまであることが分かったのです。そう、それぞれの家相家には確たる思想と流儀があることが分かったのです。これは大変です。その都度いちいち何人かの家相家の意見など聞いていては住みやすいプランなどいつまでたってもできないのです。

家相を気にするのは、家づくりを真剣に取り組んでいる表れ

こうした家相にどこまで従うか?ですが、図らずも私の家づくりのさ中、ある不幸があり、気になって知人の家相家に尋ねたところ、プランだけではなく家の外の鬼門に相当するところに何かないかと聞かれたのです。まさか、と思いつつも、敷地のあちこちを探ったところ、購入する前の家の北東の鬼門に古井戸らしきものがあったのです。旧建物の解体時にその井戸にガラやゴミなどを投げ入れて土で埋めていたのです。私はこれに驚き、慌てて綺麗に浚(さら)えてお祓いを受けたのです。その結果かどうか?なんとか大事には至らなかったような気がするのです。
以来、その轍を踏まないよう、必ずこうした古井戸や池の跡などをしっかりと探るよう努めているのです。家相があるかないかの以前に、こうして「家相」を気にしてプランをよく見ることは、すなわち家づくりはもっと慎重にかつ丁寧に進めるべき!と言うメッセージであることを改めて知らされたのです。

3 新しい「家相盤」の発見?

あの若きエンジニア夫婦の「経済封鎖事件」を機会に、その同じプラン(イラスト)で、多くの家相家の診断をもとにチェックしてもらったのです。

イラスト:経済封鎖を受け家相に従った家のプラン
経済封鎖を受け家相に従った家のプラン(画:天野彰)

その診断例をすべて重ねて、ほぼ30度毎(45度毎の家相家もいる)の方位ごとにそれらの障りの濃さ順に度合いが分かる私なりの家相盤をつくってみたのです。するとなるほど各家相家ともに真っ黒になるようなところは最凶で、あとはグレーの濃いところは凶、薄いグレーは小吉で真っ白な方位は障りなしとなります。各家相家は良相の例を挙げ、それらの丸印は中吉で、二重丸は大吉で大いに幸運と言うことになるようです。私なりに勝手に平均して作った「家相盤」です。

イラスト:何人かの家相家を尋ね診断の結果をまとめた私流「家相盤」
イラスト:何人かの家相家を尋ね診断の結果をまとめた私流「家相盤」(画:天野彰)

私としては数人の専門の家相家の後ろ盾による「家相盤」で、おおむねこの方位に従って“障る”ところを避け、同時に自分たちが暮らしやすいプランを適合させることが自分自身の「良相の家」の設計手法となるのです。しかも住む人のこの先の生活の予測や、好みの再確認と言った要素となることだと実感をしたものです。

ポイントは鬼門を把握し、水回りや玄関を避けて自由にプランニングする

もともと私自身が建築家として掲げる「良相の家」とは、風通しが良く同時に住む人の気も通う、動きやすくぐるぐると回れる家こそ健康で幸せなプランと考え提案していたのです。三重県津市にある「ひまわり」の家の例(T邸プランと写真)などはその例で、のちのこの家相盤に合わせるとぴったりとなり驚いたものです。かつての京都の町家も、狭い凹字型の平面図で中庭をかこむだけの家(プラン)と言え、なるほどきちんと家相重視で設計されていることに驚くのです。

津市T様邸のプランと外観
津市T様邸のプランと外観(天野彰)

新築もリフォームもプランニングの際も、まずは住みやすさを第一義に家族が思い通りの自由な設計で推し進め、イメージプランをつくり、それを設計者に見せて「家相チェックもよろしく」と任せればいいのです。家相盤の鬼門や張りと欠け(全長の半分以下の凸凹)を家の北東と反対の西南方位の30°から45°の間を「鬼門」と「裏鬼門」として重視し、その方位にこれらの「張り」と、「欠け」と水回りと玄関などの出入口などの“障り”だけは必ず避けるようにチェックするのです。こうした最低限の「家相」さえ守っておけば、無理したプランにならず住みにくい家ともならず、もし何かあった場合や、さらに将来気弱になったときも、こうした指摘にあたふたと動ずることもないと思うのです。

家づくりの「家相」で重要なのは、通気による「湿気対策」

人それぞれに人相があるように家にも家相があるのです。潔癖なほど家相に従ったプラン以上に、デザイン優先でモダンな家も大きな“障り”だけを外しし、運気の良い方位を優先した明るく前向きな家もあるのです。その反対に、暗くなんとなく陰気な家もあるのです。しかし私がここで言う「家相」とは風水や易(えき)による家相ではなく、古来わが国で言い伝えられて来た住まいづくりのガイドとして、間取りの手法、長年にわたる居住の体験をもとにした家づくり術の最大公約数としての家づくり手引きとなるのです。結果、家相重視の家は、なるほど家全体が明るく風の通りも良く家族も住みやすそうで、その後の家族の様子を見てみてもなんとなく幸せそうに見えるから不思議です。家相や方位学などの易を「風水」と言うように、居住学においての最大の要素は、「風」すなわち通気重視の「水」、すなわち湿気対策と思うのです。風がよく通ることは湿気を避け、通気が良いプランの家は夏涼しく住む家族が健康で、家自体も長持ちするのです。これは生理学、物理学そして心理学の科学と言えるのです。

4 家相が「家づくり」を真剣に考えるきっかけになる

しかし、私自身は多くの住まいづくりのお手伝いして、こうした家相などの不思議な疑問に何度も直面し、それをまたそれをクリアするために改めて家相を考え、プランニングする際に、もっと不思議な現象というか効果を感じることが多かったような気がするのです。その1つが家族の皆が一丸となってプランを見つめるようになることです。それまで家づくりに関心を示さなかった夫や子どもまでもがそのプランづくりに真剣となり、良相の家とは?と考えるうちに夫婦とは?家族とはなにか?を考えるようになっているのです。家相とはなにか、その起源とは、仕組みとは、そして縁起は、などなど、日本の家とはなにか?伝統とは?と考え、家の建つ位置その向きや形を考える中でわが国の家の在り方やその伝統に気づくのです。

「方位」の意味を知る

単に物理的な方位だけではなく、その持つ意味や意識があることが分かります。その方位には、時の流れと色があることがしかも気分やパワーを持っていることが分かるのです。

あの相撲の土俵の屋根の四隅から下がる房に色があることが分かります。それこそがあの赤房・白房・黒房・青房の4色なのです。(案外このことを知らない人も多いのですが)、この色こそ方位の色で明日香村の高松塚古墳の彩色壁画の白虎や玄武の絵画で、赤は南方位で朱雀(すざく)、白は西方の白虎(びやっこ)、黒は北方の玄武(げんぶ)、そして青の東方の青龍(せいりょう)となっているのです。

1,300年以上も昔の飛鳥の時代からの伝統的でしかも正確な方位なのです。その方位の色は生活に深く関わり、住みやすい恵みの地形であり、その色と形は鳳凰や龍、亀や虎などの縁起の動物に例えられているのです。その色こそ南は赤い鳳のように羽を広げた恵みの田園や湖、東にはくねくねと竜のように流れる命の青い川、北は敵や北風から守ってくれる大きな亀のような黒く固い山に囲まれ、西には虎のように走る白い道と、城や伽藍さらには屋敷づくりの土地選びを言い表したものだったのです。

さらにその方位は八方になり、細分化され、12さらに24方位となるのです。すなわち360度の30度、15度ごとに方位の意味があり、それがまた子・丑・寅・・・などの十二支に例えられ、方位と連動し時を刻むのです。その方位と時は真北が「子」で、時刻の子(ね)の刻、すなわち深夜0時前後で、その隣の丑と寅、丑三つ時などの3時4時で方位は北東で、丑寅(うしとら=艮)の方位は鬼が出入りする不吉な方角、すなわち鬼門(きもん)として古来忌み嫌われてきたのです。

家相盤の方位と時(画:天野彰)
家相盤の方位と時(画:天野彰)

「家相」とは日本の伝統文化

なるほど家の「間取り」すなわちプランニングも、またそこに住む人たちの生活もこれほど方位と時刻に深い係わりがあると家相などナンセンスなどと言っていた建て主もさすがにこの「鬼門」の存在が気になり、家族や自分に何か不幸でもあると、家相の存在を認めざるを得なくなるのです。根強いわが国の伝統文化とも言えるのです。

家相重視の都市住宅、京都の町家の佇まい
家相重視の都市住宅、京都の町家の佇まい(天野彰)

こうして家相の方位の共通点を調べその原因を調べてみますと家相には、単なる縁起担ぎや八卦ではなく家と住む人の深いかかわりがあることが分かります。

  • ・どの部屋にも光と風が通るシンプルな間取りで開放的空間。(居心地)
  • ・シンプルな間取りで住む人がスムースに動きやすい。(動線)
  • ・間取りに懐(ふところ)があり余裕があり豊かさがある。(安らぎ)
  • ・家族や住む人の溜まり“場”がある(居場所)
  • ・光と風の流れを意識し抑制する「張り」と「欠け」がある。(環境)
  • ・骨組みと壁のバランスがよく地震・台風の災害に配慮。(安全)

などなど、気候と時間、住む人の行動と起こりうる火災などの危険に対処した体験的で歴史的なことが底辺にあることが分かるのです。なんとこれは現代の家づくりでも最も重視すべき注意点でもあるのです。それに加え住む人のドラマや運命までも示し注意し、その効果までを喚起していることに驚きます。

なんと“家族重視”の家づくり

  • ・家族との関係がよさそうな部屋のつながり間取り。(配置)
  • ・敷地、土台、床下に水周りに湿気が回らず水はけが良い。(健康)
  • ・老親と本人、さらに子夫婦と孫と四世代までが一緒に住む。(世代同居)
  • ・最後までわが身を支えてくれる間取り。(自助自立)
  • ・狭くても広々とした狭“楽”しい間取りで省エネ。(経済)

なんとこれは、“ハウス”から“ホーム”となった現代の住まいづくりの教本とも言えるのです。しかも、その指示にはいろいろな緩和?や方位の良し悪しと、その中間さらに幸運の方位の段階を示し、その方法を説いているのです。なんとこれこそ日本の季節や風土さらには地形ならではの「いい家」を建てる先人たちの家づくりの知恵の集大成であることが理解できるのです。そうであればこれはできるだけこの家相に従った方がよさそうですが、そうは言っても実際にはなかなか家相盤の通りには行きません。トイレや玄関が少し鬼門の北東に引っかかったり、キッチンが掛ったりしてしまうこともあります。そんなとき、家相家によっては人が出入りするそれらのドアさえ当たらなければ大丈夫とか、便器に当たらなければ良いとか、現代はほとんどが水洗なので汚水桝など汚水系が溜まるようなところを避ければよいとか、キッチンもレンジなど裸火は避け、IHレンジなら良い?などと、時代に合わせた現代家相家もいるのです。

都市ならではの中庭を立体的にとらえた風の通りの良い町家(画:天野彰)
都市ならではの中庭を立体的にとらえた風の通りの良い町家(画:天野彰)

「町家」は都市部で家相をとり入れた家

こうして気になることを取り除いて、ひょっとしたら良いことがあるかも知れないなどと思って暮せるのは楽しいことです。しかしなによりもこうして家族皆や設計士などとプランを真剣に検討している間に家族一人一人の想いや好み、さらなる家族の将来の姿などが見えて来て、改めて家相を検討することは良いことだと思うのです。都市に住み狭い敷地に軒を連ね、目いっぱいの家をつくり、庭も猫の額ほどでとても家相どころではありません。しかし早くから都市に住む都の人は壁で区画してコートハウスの方が合理的と、町家を生み出したのです。このコラムでは何度も出てくる町家の家は、本来中庭は凶相と言われているはずですが、逆に中庭プランの見事なほどに家相を守っているようすが伺えとても興味深いものです。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

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