住宅関連記事・ノウハウ
住む所と今家づくりについて【自身に合った家について考えよ
○ 今回のポイント 1 不幸な災害の中に見えて来たもの
○ 今回のポイント 2 今住む場所を改めて観る
○ 今回のポイント 3 今住むところさらにはその覚悟
○ 今回のポイント 4 前を見ると先が見えて想像力が増す
自身にあった家とは、 “自分自身探し”だと話して来ました。しかしこうも周りでいろいろなことが起こると家づくりは本当に難しい世の中かもしれません。
1 不幸な災害の中に見えて来たもの
阪神大震災からすでに28年経た今でも目に浮かぶのは、想像を絶する破壊力です。
飛び跳ねるように家やビルが倒壊し、3センチもの太い鉄筋や厚さ3センチの鉄骨のコラムがスパッと切れた一瞬の応力が掛ったような直下型の地震。今度のトルコ・シリア地震の破壊はさらにその数倍とも言われます。
3月日東日本大地震が発生からも、すでに12年となります。そこに加えて今また南海トラフ巨大地震、さらに追って起こり得る東南海の半割れ地震その連鎖と、私たちが住む列島はどこに居てもいつ激しい揺れと津波の脅威にさらされているようです。
これらの多くの犠牲を伴う不幸な地震の発生の中に、都市に潜む数々の活断層や広範な大陸に走る巨大な断層とプレート移動に伴う歪みによるはね返りの波動のメカニズムとおおよその予知、揺れ、発生個所やエネルギーまでもが見えてきます。
2 今住む場所を改めて観る
地震や災害に遭遇すると今住む家を「生かすか壊すか」耐震強化リフォームなど迷い、焦りますが、古くて弱弱しい建物だからと諦める前に、まずはわが家とその周辺を改めてよく観ることが大切です。
種々の地震でも壊れずに助かった家や、安全に逃げることができた家、巨大な津波でもさらわれなかった家や場所、反対に内陸でも津波の被害にさらされたところなどの明暗がありました。
津波の脅威に慌て、今の家や街を捨て、巨大な防波堤など巨費を投じ、何が何でも高台へと、膨大な盛り土をするなどした結果、美しい街や港の景観は失われ、故郷までも喪失したようになってしまいました。
<写真:津波から助かった屋上(天野彰)>
三陸を訪れ、多くの人たちにお逢いしお話しを伺い実態を見て来ましたが、その決定が何とも拙速で、寂しくも重苦しい気持ちになって、家のリフォームと同様、生かすか壊すか、冷静に見て考えることが大切なことだと実感して帰って来ました。
3 今住むところさらにはその覚悟
南海トラフ巨大地震を想定した最近のシミュレーションでは10m以上の防波堤でさえ凌ぐ巨大津波とも言われ、再稼働する原発周辺に潜む活断層、ミサイルの標的にされるリスクなど、まったく次元の違うリスクの時代となり、近視眼的な政策では、今のことしか対処できないことがとても気になります。
電車に乗って左右を見ると全員がうつむいている光景のように。誰も前を見ていないように感じます。
こうも皆が前を見ずにいて、果たして将来の姿など見えるのだろうかとさみしい気持ちになるのは私だけでしょうか。
<写真:盛り土高台に沈む震災遺構(天野彰)>
4 前を見ると先が見えて想像力が増す
こうしたことから家づくりの現場でもいささか疑問に感じることも多いのです。
おりしも全国にあり余るほどの「空き家」が増えている社会現象も、その結果と言えうる湾岸のタワーマンション。
その反対に在宅でリモートワークだからと遠隔地へとうつり住んだり、今の家や街を捨てるなど、一見時代に合った家の価値のように思えるのですが果たして子どもたちの社会人としてのコミュニケーションや教育さらには自身の付き合いや故郷までも奪ってしまっているのではないでしょうか?肝心の老後の支えさえ失ってしまいそうです。
今の家・今の街を活かそうと考えると、いろいろな考えや周りが見えてきて、要所の補強や、地盤や位置の在り方、防災の要点や避難ルートを日常の散歩コースにするなど、前向きな生活姿勢と変わって溌剌として来るのです。
<イラスト:わが家から見た危険度とその防御(天野彰)>
<イラスト:わが家の建っている位置と地盤の揺れ方(天野彰)>
家づくりのお手伝いをしていて、こんな時にこそ建築家冥利に感じるのです。これは家だけではなく、アパート・病院さらには工場をつくる人たちが皆、生き生きとして前を見るのです。
その姿はまるで、わが街そして国の将来までも見ているようです。
次回は『それでも家を建てる!』です。お楽しみに!
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