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活かすリフォーム 「場」に「時」を加える
最近、何で今?ということが多い。各地で沸き起こる市街地再開発に加え、神宮外苑の60年以上の樹勢伐採の再開発、遅れそうな万国博に便乗しての関西のとばく場IR参加?人口減少が問われ、リモートワークの世に、広大なオフィスや商業施設づくりと、食い合い必死!の増床競争。同時に不必要に消えていく街の界隈性と飲み屋街や各地の公園や広場。
1 リアルな家族の「場」と「時」の流れのプランニング
<イラスト:壁から出て来る折り畳み“和室”?(画:天野 彰)>
改めて、いつの時代となっても、住まいはその「時」と「場」のスムースな移ろいこそが人間的で大切なことだと思うのです。そんなセンスの家こそ、長く住まいやすく、家族も家も長持ちする良い家となるのです。
核家族でしかも家族のだれもがモバイルやSNSで社会と繋がっているIT社会で住まいの設計で忘れてはならないのは、意外にも近くに居ながら家族はばらばらで、LDKはおろか玄関でさえ、廊下や階段のような、“すれ違いの空間”あのa life without talkingの通り道のような「場」となっている。
筆者はこの「場」をあえて現代の“間”と呼んでいるのですが、間とはかつての部屋ではなく、あの束の間、またたく間の“間”で、そこは空間だけではなくではなく、時すなわち時間の“間”でもあるのです。
2 「間」は部屋ではなく時の間
<写真:壁から出て来る?まさしく折り畳み!(設計:天野 彰)>
今こうして住まいに、生活の場に時間を取り入れ重視することによって住まいの大きさは最小限にすることもできるのです。家族が「個」であるIT社会の家は個室だけで最小限となるのですが、この通り道のような空間の“場”を時間差で“多目的”な機能を持たせると住まいは縮められることができます。
その機能とはその場がダイニングながら、家族の勉強の場、あるいは仕事場になるなど、時間差によって多目的に変化するあのジャンボテーブルで家族が勝手気ままにいろいろなことを“同時に”することなどです。
この場は既に部屋ではなく空間でもなく時間です。同一空間で時間を重視し使い分けることは、一日の生活、あるいは行事だけではなく、長い人生の変化にも対応するのです。これは住まいだけではなくビルや病院施設などその機能あるいは用途などまでを随時変化させるコンバージョンの手法ともなっているのです。
間は「時間」であり「空間」「人間」でもあるのです。
<イラスト:玄関のブルートレイン式?客間(画:天野 彰)>
狭く限られた都市の住まいこそ、筆者はこの時の“間”を重視し、いろいろな実験を繰り返してきました。お茶のお稽古や和服を畳むなどの時に和室が欲しい!そんな家族にLDKの壁の中から「床の間付きの和室が出て来る!」“折り畳み”和室や、来客の多い家のリビングの片隅に壁からベッドが出て来るブルートレイン式客間などをつくったりもしたのです。
こうした“空間ではない「間」”を積極的に作り上げ、暮らしの中に変化を与え、バラバラな家族一人一人の日常の中に一瞬でも同じ時と場をつくることが重要だと思うのです。住まいを夫婦や子どもを一つの家族などとひとくくりにして「間取り」を考えると、家は単なる「間」すなわち「部屋」の連続体となるだけです。しかしあえて家族の一人一人を「個」の「人間」としてとらえることで家族が一緒に居る “時”と“場”をつくることこそがIT時代のリアルな住空間となると思うのです。
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