住宅関連記事・ノウハウ
高齢になってもつかず離れずの暮らしが理想的
【1】高齢になってもつかず離れずの暮らしが理想的
30代で新築や中古住宅の購入を計画していると、なかなか思い浮かべないこととして自分たちの子供が独立してからのセカンドライフを夫婦でどう過ごすか、ということがあります。高齢になってからの段差解消といったバリアフリー対策はもちろん、照明のスイッチを大きくすることなどのユニバーサルデザイン、室内の温度差をできるだけ少なくする住宅性能向上、緊急時にすぐにかけつけてもらえる見守り機能といった設備や仕様の工夫は容易に思い付きます。
最も大切なことは、夫婦だけの生活に戻ったとき、どう日々を過ごすか、ということ。住宅の仕様はもちろん大切かもしれませんが、高齢になっても身の回りのことを自分でこなせるほど元気でいられるほうが、ずっとしあわせな時間を過ごせると思えるのです。理想はPPK(ピンピンコロリ)。家族に大きな負担が掛かるNNK(ネンネンコロリ)の余生は、だれも願っておりません。夫婦それぞれが、理想とするPPK(ピンピンコロリ)で過ごせるようにするには、住宅の仕様・性能はもちろんのこと、独立している子供の家族や近隣と、どう関わっていくか、ということが大切なのです。
ネットで検索したり、直接、自分の親に聞いてみると、高齢者(親)が抱く気持ちを裏付けるデータはたくさんあります。いくつかのアンケートを紐解いてみると、大半の親は、自分たちが老いた父母を自宅で介護してきた経験がトラウマになっている傾向が多い様子。自分が元気なうちは子どもの世話になりたくない、とお考えの方が大半です。
【2】子どもの世話になりたくない理由
- ・ 子どもに迷惑を掛けたくない
- ・ 自由に暮らしたい など
自分たちが介護で苦労した経験を自分の子供たちに背負ってほしくない、という考えを持っている方々が多いようです。上記のような高齢者の気持ちを踏まえたとき、高齢者が快適に自立して暮らせる家とは、どんな家なのだろうと考えました。自分で家事を行うならば、家のなかで火を使わないオール電化住宅も有力な候補になります。大半のオール電化住宅は、断熱性・気密性に優れていることから、冬は暖かく夏は涼しい住まいになります。バリアフリーやユニバーサルデザインについては、自分たちがよほど変わった要望を出さなければ、大半の設計担当者はきちんと配慮した仕様にしてくれます。
夫婦、独立した子供世帯、そして近隣との係わりを考えたとき、決してないがしろにしていけないことはつかず離れずの暮らし方ができる間取り計画ではないでしょうか?
夫婦のそれぞれが自分のリズムで生活できる居場所があるのが前提。その上で、家族や周囲の人々がいろいろな形で関わることができる、というスタイルが、高齢者の自立する気持ちを促します。自分ひとりの時間を大切にしたいとき、ちょっとだけドアを閉ざしたとしても、交流したいときはドアを開く。そのような心配りが間取り設計にいかされるなら、きっと世代が違っても、複数の世帯であっても、つかず離れずの関係で暮らせると思います。そう考えれば、これからは家族の気配を感じつつ、適度な距離感を保つことができる優れた性能をもつ住まいが、これからの住まいのスタンダードになっていきます。
最後に、高齢者の住まいで絶対外してならないことは、相続対策。2015年から、相続税の基礎控除が大幅に減額になります。東京では、相続税の納税者が3人に1人とも、4人に1人とも。二世帯住宅を建てることで、相続税の課税対象になることを避ける方法があるのです。
【3】高齢になってからも快適な住まいの仕様とは
高齢者が暮らしやすい住まいについて、思い浮かべること- 『段差をつくらない
- 手すりの設置
- すべりにくい床材
- 居室を1階に集約
させることなどがありますが、ほかにもいろいろ配慮すべきポイントがあります。
- 浴室・洗面所・トイレの動線を段差なくつなげる
- 高齢者に限らず、間取りと仕様の工夫だけで快適に過ごせるコツのひとつです。浴室の入口は2人が通れる3枚引き戸にすると、後々の対応が楽になります。脱衣室・洗面所の壁はつくらずにアコーディオンカーテンで仕切るようにしておくと、プライバシーへの配慮と使い勝手を両立できます。副次的な効果として、水廻りを集約した設計にすることで、わずかながら建築コストが下がる効果も期待できます。
開口部に設置する間仕切りは引き戸がお勧め- 開き戸(通常の室内ドア)は足腰が弱ると、使い勝手が悪くなります。スペースと間取りに問題がなければ、引き戸がお勧めです(障子やふすまのような左右に滑らせて開閉するもの)。室内の段差で最も危険なのが、引き戸の溝やレールなど、高さ1cm程度の段差。1cm程度の段差は、立って歩いているときはほとんど意識しませんが、足腰が弱りはじめると、とたんにつまづく危険性が高くなる段差なのです。できれば、上部にレールをつけた吊りタイプの引き戸が良いでしょう。
住宅内の温度差をなくすこと- 暖かい居室から寒いトイレや浴室に移動すると、温度差で身体的なダメージを負う危険性があります。住宅の断熱性を高めて室内の温度差を極力縮める、もしくは場所ごとの暖房方法を工夫して、トイレや居室、そして廊下を冷やさないようにする工夫が大切です。
【4】東京都健康長寿医療センター研究所の調査
この現象をヒートショックといい、2011年の1年間で約17,000人の方々がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計され、その死亡者数は交通事故による死亡者数(4611人)をはるかに上回ります。
建物の気密性も重要- 住宅の寿命を大きく縮めかねない壁体内結露を防ぐことならびに、室内に籠もる余分な湿気を計画的に戸外に出すために必要なことなのです。どんなに室内の使い勝手をよくしても、家のなかの温度差が10℃以上もあったり、梅雨時にベタベタまつわりつくような湿気に囲まれて過ごすような生活では、四季を通じて快適に過ごすことはできません。最悪の場合、健康に大きな被害をもたらす可能性も否定できません。限られた予算でより大きな住まいを求めるあまり、住宅性能をないがしろにすると、このように住んでからのリスクが格段に高まります。
住宅の仕様を決めるのは、あくまで住む方々です。ただし、他社と比較して大幅に安い価格、短い工期にはなんらかの事情があるものと考えながら住宅会社選びをしたほうが、住み始めて後悔することは格段に少なくなるようです。
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