住宅関連記事・ノウハウ
建築家の役割(2)「夫婦の最大公約数の家?を探り出す」
○今回のポイント 1 機能性や費用面と異なり意見が食い違うデザインに配慮
○今回のポイント 2 設計者が要望を取りまとめることで夫婦が満足いく住まいが出来上がる
住宅のデザインは、その家に住む人やその家族、とりわけ今の時代に即した夫婦の家は、その機能はもとよりデザインの配慮がなされていないことが多いのです。では、現代の夫婦の家とはいったいどのようなものでしょう、また設計監理者の役割とは、デザインの配慮とはどう考えたらよいのでしょう。
<夫婦の顔のある家Y様邸の外観(設計:天野彰)>
費用よりも夫婦ごとで異なる間取りやデザイン性を重視する
私は家の設計を依頼されたとき、その瞬間に家族の、とりわけ夫婦の家の「顔」をイメージします。それは目鼻の付いたものではなく、ぼやっとした輪郭のようなものですが、不思議なことにそのイメージはいつまでも払拭(ふっしょく)されることなく、設計の最終の段階にまで付きまとうのです。しかし、打ち合わせを繰り返し、次第に親しくなっていくほどにこれが大きな間違いであることに気づくのです。改めてその夫婦の夫と妻を別々に意見を聞かせてもらい、さらにはその違いのいくつかを確認させていただくのです。
それがキッチンや浴室などの水回りや収納ではなく、意外にも玄関の様相や、和洋のデザイン感覚、さらに夫婦それぞれの場の確保(取り合いか?)であることがよく分かります。双方で盛んに色柄や費用について気にしている割には案外本気ではなく、後で予算のやりくりであたふたと揉めることにもなるのです。
実はこんなことはよくあることで、夫婦の意見の違いや感覚のずれをお互い感じてついには家づくりそのものが嫌になってしまったり、建った家も夫婦互いが満足することにならないと言うのです。
<Y様邸のキッチン・ダイニング(設計:天野彰)>
設計者が入ることで最終的な「夫婦の家」になる
そこでこんな悲劇が起こらないためにも、設計者は勇気をもって設計の最終段階であえて間に入って、今までの意見の確認を行うのです。まさに今の夫婦の家とはどんなものなのかを提示し、はたして夫婦に似合った家なのか?この先々飽きが来ないか?そして老いて夫婦だけでいつまでも暮らして行ける家なのかなどを話し合いその調整をするのです。
すると不思議なことに自然に2人の意見の“最大公約数”が見えて来るのです。設計の最後の最後で本当の「夫婦の顔」が見えてくるのです。 なんと、その顔には優しいほほ笑みと、失礼ながら夫婦の皺さえも見えて来るのです?
<Y様邸のリビング 畳スペース(設計:天野彰)>
次回は「真っ白なキャンバスに何から描く?」です。
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