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住宅関連記事・ノウハウ

建築家 天野 彰 家づくり出会いと縁6 剥き出しローコスト施工

はじめに

家づくりでの人との出会いは濃厚で、さらに幅も広いものです。家づくりの縁で親せきやその建主の稼業、それが医師であったり、なんと味噌・醤油の工場主であったりと筆者の建築設計の実績はそんなご縁ですべて賄って来れたと言えるほどです。

今から60年ほど前、初めて設計を担当した住宅の建て主から、空いた土地があるのでアパートを建ててほしいとの要望があった。しかし建設総工事費の7割ほどの融資額しか借りられず、その範囲内でなんとか住戸数が最大の集合住宅を建てて欲しいと言う厳しい条件の依頼だったのです。

新たな賃貸住宅のプランとカタチの提案?

建設資材や人件費が高騰する今日同様、如何にやりくりするかが問われる事態だったのです。おりしも欧州の無銭旅行から帰ったばかりでル・コルビュジエのユニテ・アビタシオンの衝撃的な想いが頭にあり、そんな集合住宅の再現の機会と、果敢に挑戦することとなったのです。

しかしこのことが筆者自身の建築家人生を運命づけることになるのかもしれません。当時(1964年)の東京オリンピックや大阪万国博などの華々しい時代を横目に、ただひたすらプランと工法とデザインでどれだけ合理的にして部材と手間を少なくするか・・・?

3mスパンの最小限の住戸ユニットを立体的にメゾネット式に組み上げて、エレベーター着床階数も半分に、かつ廊下面積も最少の配置としたのです。おかげで共用部分が最少となり、賃貸効率、今で言うレンタバル比も抜群のアパートとなったのです。

左:アビタシオンをイメージしたメゾネットスケッチ(筆者)中央:メゾネット玄関からのスケッチ(筆者)右:フンドーキン・マンション完成写真_1968年(筆者撮影)
左:アビタシオンをイメージしたメゾネットスケッチ(筆者)
中央:メゾネット玄関からのスケッチ(筆者)
右:フンドーキン・マンション完成写真_1968年(筆者撮影)


当時メゾネット式住戸は珍しく、かつ全部屋が外部に面し、明るく開け放しが出来、プライバシーもよく人気のアパートの案となったのです。

柱と梁むき出しデザインのローコスト集合住宅の挑戦

パース:大分中央町再開発「フンドーキン・ビレッジ計画案」図、一番後方がフンドーキンマンション(筆者)
パース:大分中央町再開発「フンドーキン・ビレッジ計画案」図
一番後方がフンドーキンマンション(筆者)


こちらの提案に共感した建て主はこの敷地に接するさらに広大な空き地を含め、全体計画として随時建て増して行こうとなったのです。そこでまず建てようとした住戸は全体計画図の上、北の一番左端のものだったのです。

しかし今日同様、その後の建設資材や人件費のさらなる高騰と、さらに建主の工場建設などの事業投資などや諸般の都合で今も駐車場のままの“未完成”となっているのです。賑わいを増した、今日こそ現実化したいものです。

パース:左:フンドーキン・マンション東面_1968年(筆者撮影)右:フンドーキン・マンション階段リブ_1968年(筆者撮影)
左:フンドーキン・マンション東面_1968年(筆者撮影)
右:フンドーキン・マンション階段リブ_1968年(筆者撮影)


その一期?工事はギリギリの予算でプランの合理化とともに基本構造を柱と梁と壁だけの仕上げ無しの施工で、素材感が出せるように外壁の型枠に凸形台形の角棒を20cm間隔で打ち付け、そこにスランプ15㎝以下のコンクリートを丁寧に打った。

こうしてその凸状の角棒をはずしやすいよう早めに脱型し、それでも欠けるリブの角を左官で修正するのではなく、逆に手間の安いハンマ―で叩いて丸めに削ったのです。筆者も含め近隣の人も参加してコツコツ叩いたのです。おかげで荒々しくも優しいビロードの肌合いのコンクリートの壁が生まれたのです。

足場・仮設・仮枠など省力施工の「フンドーキン・マンション」

この施工計画には当時工藤組という中堅施工会社の社長も大いに興味を持ってくれてまさに大工さんのように施工計画に参加され、鉄骨の避難階段をあらかじめ建ててそこを足場代わりに使い、二層飛ばしで同一の型枠を割安についたパート(今で言う)ご婦人方の手間で丁寧に洗って再使用したのです。

さらに設備配置も縦配管を軸に各階プランの水回りを集中させ無駄な横配管、横配線工事を極力避け、従来の半値ほどで施工したのです。おかげでシンプルな配管で半世紀以上故障もなかったようです。

こうして不要なものは何かと徹底的に省いて、おかげで見事に予算内?に建ち上げ、おおいに喜ばれたものです。まさに部材と手間と知恵の「組算」でした。これがまた筆者の事務所の今日の設計思想(OR)ともなったのです。

果たして「フンドーキン・マンション」アパートは見事、“工事費の7割”で建ち、その後半世紀以上が経って以来50数年余、Twitter(X)や新聞などで保存の声も起きたが、耐震補強工事などが困難でやむなく壊されることとなったのです。ご興味のあるお方はXにて「フンドーキン・マンション」と拾ってみて下さい。

というわけで、次回はなんと市場価額の7割、いやそれ以下を狙った「大分方式」と「狭“楽”しく住む法」の発見をお話ししたいと思います。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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