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生きるためのリフォーム(3)住まいの安全は「柔構造」- 1 -
生きるためのリフォーム(3)住まいの安全は「柔構造」- 1 -
―生きた木と木を柔軟に継ぎとめる仕口の技!―
木造はいい。薫りがいい。ではなぜ「木造の家」が本当にいいのでしょうか?木造と言う名ばかりの哀愁で、「木の家」は珍重され特殊視され、かえってその普及が疎外されているのだと思うのです。あまつさえ輸入された廉価な熱帯の木材や合板による住宅が「木の家」として普及し、大きな誤解のなかで本来の匠の技の家から、名ばかりの「木の家」が今、「伝統木造文化」のわが国で台頭しているのです。
では本来の「木造の家」とはいったい何でしょう。そう、「木の家」ではなく「木造」なのです。しかもその木の造りこそ匠の技による木と木の組み合わせによる「木組み」なのです。まさしくその「木組み」こそ「仕口」と呼ばれる匠の技のことです。これにより元来の木の特性は生かされ木組みの木造となるのです。これを私はあえて「伝統木組み木造」と呼んでいるのです。
その「仕口」こそ、枘(ほぞ)と枘穴による木と木の継手(つぎて=イラスト)よりなる木組みなのです。それは現代では残念なことに、匠の大工が少なくなり、枘よりなる木組みの仕口はプレカットと言う機械によりまさにカットされ、強いては、仕口は“継手”と解釈され、まさしく金属のアームジョイントのカプラーに柱や貼りに差し込んだ、木組み?木造となっているのです。
<イラスト1:木造こそ木組みの仕口の技「枘と枘穴」(画:天野彰)>
本来の木組みの木造たる所以は、木は切られてもなお生きていることで徐々に乾燥して痩せたり、湿気て増えたりし、さらに時とともに反ったり、捩じれたりもするのです。しかもその樹種によってはそれらのリズムさえ違うのです。
さらにときには猛烈な台風や地震も起こり、その仕口に大きな負荷も掛りそれらも柔軟に受け止めるのです。これこそ生きている木の住まいの証であり、その木目を読む匠の技こそ“目利き”と言われる大工棟梁の所以なのです。この妙こそが古来「伝統木組み木造」なのです。
その動く木組みの特徴的な例えとして仕口を造っている間が無い場合や、それ以上に動く力がかかる時は縄を束ねて互いの材を縛るのです。その特徴的なのが白川郷の合掌造りの縄組架構で複雑な斜め材を結び、さらに大雪の応力にも柔軟に撓うよう工夫しているのです。(写真) それこそ街を動き回るあの祇園祭の山車や鉾はすべてこの縄の技で結んでいるのです。これは各部材をばらして次年まで保管するためにも良いのです。
<写真1:白川郷合掌造りの縄仕口 (撮影:天野彰)>
<写真2:祇園祭の縄仕口の鉾 ぎしぎし揺れて動く(撮影:天野彰)>
次回は、楔(くさび)の妙!清水寺の舞台懸崖構造です。
(緊急のお知らせ)
東日本大震災から5年。これから強くて住みやすい木造ため、あり余る国産材の杉の木材を強靭化し、かつ自然乾燥するための新技法が、3月8(水)~11(金)「建築・建材展」(東京ビッグサイト東5・6ホール・エイコーブース)にて展示されます。
>>「建築・建材展」について詳しくはこちらから
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