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生きるためのリフォーム(4)住まいの安全は「柔構造」- 2 -
生きるためのリフォーム(4)住まいの安全は「柔構造」- 2 -
―対自然ではなく従自然の「柔」の街づくり!―
3,11から5年のスパンで、各局の報道番組などから現実の進捗の姿が露わになり、その善し悪しも見えてきました。特にメルトダウンを同時に3基?も引き起こした福島原発周辺は惨憺たるもので、抱えきれないほどの汚染土や汚染水の処理はもとより、大量の高濃度のデブリの取り出し廃棄までの気の遠くなるような工程?に、地元に帰還解除が出ても、被災者の気持ちを思うと息が詰まる思いがするのです。
このことはその他の沿岸被災各地も同じことが言えるのです。手間暇のかかる突如の防潮堤建設や高台造成、建築禁止区域をつくり?半ば強制的な街ごとの高台移転などに伴い、「医・職・充(子育てと憩い)」の街のインフラ構築や、居住のソフト面が全く追いつかず、掛け声だけで国家の努力も姿勢も見えず。仮設住宅や縁者頼りにバラバラに生きて来た人々への暖かいコミュニティーづくりはおろか、肝心の職住のバランスなどの 国がすべき“街の中枢”いわば“街の核”つくりが未完遂であることです。
<イラスト・写真1:中国永定の「客家」円楼のような、円形防災『街の核』(画:天野 彰)>
震災直後の5月ごろ、私たち建築家は救済と同時に、今の街の面影をそのまま(土地の特性と権利)を担保した、まったく新たなアイデアの復興と同時に災害対策の必要性があることを2,3の対処策や核づくり例をスケッチとともにNHKTVにて紹介提案したのです。(イラスト:その他詳しくはまたいずれの機会に) そのことこそ、津波や地震に打ち勝つ対自然ではなく、避けて移転することでもなく、巨大な自然に面と向かって柔軟に受け入れ、受け流す「柔」の精神だったのです。
<イラスト2:津波が来たら逃げ込み受け流す地上の『病院船』(画:天野 彰)>
今各地で巨大な防潮堤や、膨大な手間暇がかかるかさ上げ造成工事が進む中、私どもの提案のいくつかがすでに完遂できたであろうと思うと、改めて口惜しくも感じさせられたのです。今こうしている間にも沿岸部の造成中に新たな津波が発生し、大きな水害が起こりかねないのです。 わが国、1000年のこうした災害対処法こそは、断水でもなく防潮でもなく、それは柔軟な治山治水であり、防災以前に“減災”の意識で、耐震よりも“従震”、つまり自然に対して「柔(やわら)」の精神であったことが伺えるのです。 それはいざとなった時の避難を考えたその場しのぎの仮設ではなく、どんなに小さくとも街の拠点、本気で本物の“街の核”をつくることが急務だったのです。その核に街や国は自然に形成されたのです。
<イラスト・写真3:足元で波を受け流す住ユニット『フレームコロニー』(画撮影:天野 彰)>
それにつけてもこの豊かな時代!沿岸被災地の生活は本質的にはがほとんどが回復していないのです。それは一体なぜでしょう。1945年の世界大戦後の敗戦直後の食べるものもなく、放射能と瓦礫のぐちゃぐちゃの焼け跡の中からのあの復興のスピード、(世界に先駆けて東海道新幹線が走り、東京タワーが建ち、カラーテレビ放送も始まり、原爆の広島、長崎が今の街の原型に復興し、1964年のオリンピックを無事開催した当時)にもはるかに劣るのです!
今こそ政治も経済も、大震災から9年後の、一兆円を超すとも言われる2020年のオリンピック開催に向け、聖火台さえも忘れる甘々の有識者たちも、私たち国民も、口先だけの激励や励ましの歌ではなく、心から大いに今を反省するべき時ではないのでしょうか?
次回は建築も「柔(やわら)」の精神で「柔構造- 3 -」
★毎週土曜日 最新コラム公開中! 次回お楽しみに♪
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