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建築家 天野 彰 「家相」はあるか?(2) 家相は家づくりの手引書?!

はじめに

南入りの広い玄関は三和土(たたき)の土間で、入って右側に大きな洞穴があり、もみ殻に包まれたサツマイモやジャガイモなどが保管されていました。左は一段低い上がり縁を挟んで「店」と呼ぶ8畳の畳の間があり、その右角に黒光りする一尺角の大黒柱が悠然と立っていました。

かたく黒い土間は奥の勝手へとつながっていて、勝手には「竈(かまど・くど・へっつい)」があり、そこで薪がたかれ、釜が煮立っていました。その湯気も薪の煙も屋根裏に吸い込まれ、梁(はり)や母屋(もや=屋根を構成する木組み)は煤(すす)で真っ黒になっていて、見上げると子ども心に果てしない宇宙のような永遠を感じたものです。
毎年、暮れになるとその奥の土間で蒸篭(せいろ)で蒸した糯米(もちごめ)を石臼でついて正月の支度をしました。この季節になると大学で東京に出てきた私に 祖母が、「いつ帰るのか?」と催促して来るのです。それによって餅つきの日取りを決めるためでした。

今、半世紀以上たっても不思議に、そのときの空気と匂い、風の肌ざわり、そして情景を昨日のことのように覚えているのです。特に竈や土間、さらに流しや神棚をいつも清め、お供えをして手を合わせる祖父母を見て、住まいのあちこちに何か霊的なものが潜んでいるような感じがしたものです。

果たして今時の親たちはそんな家の価値や力を子どもたちに教えているのでしょうか。

その意味で私は「家相はある!」と訴えているのです。どんな家にも歴史があり、その家で曽祖父や曽祖母たちが生きてそして死んで行ったところでもあり、なによりも自身が生まれ育った家だからこそ重みがあります。

家相は「科学」的に風向きや湿気を表す方位として生活に取り入れられる

このことを未来に置き換えて考えて見るのです。今、家を建てる私たちがそのはじまりとして、そこにわが子や孫たちが生まれ育ち、そのまたひ孫たちが 子々孫々、生きて行くのです。自身もいずれ年を取り、その家の祖先の一員となり、また子孫に敬い、尊ばれることになります。家づくりはそんな思いから 大切にされ、家相はそのための教本とも言えるでしょう。大先輩である清家清氏が「家相は科学」「健康や安全の統計的な環境学」と論じたほど、家づくりの手引書の役割を果たします。

それは、私たちの生活には土地の地形や気候や方位が深く関わり、風向きや湿気などの物理的な方位だけではなく、不思議な運命的な意味や力があるのです。その方位については、よく引き合いに出される高松塚古墳の四方に描かれた彩色壁画などです。
「白虎(びゃっこ)」や「玄武(げんぶ)」のように、方位は色や地形にも象徴され、縁起にもなっているのです。すなわち「白虎」は西方で道など、現代では高速道や鉄道。玄武は黒で北方の亀すなわち山や高台。「朱雀(すじゃく)」は赤で南方位、ひろい平野や池などに例えられます。そして青は東方の青龍(せいりゅう)、すなわち川。1,300年以上も昔から都市づくりや城づくり、さらにはこうした墓づくりの 「良相の方位」が縁起として崇められてきました。現代の国技館の土俵の四方から下がる赤房や白房などがそれです。さらに子・丑・寅など、十二支と連動して、子(ね)が真北の方位で、子の刻、すなわち深夜0時、その隣の丑(うし)と寅(とら)が午前2時、4時で、方位 は北東。これこそが丑寅(うしとら)の「鬼門(きもん)」で、この方位は昔から忌み嫌われ、まるで不気味ななにかがうごめいているような気がします。

「方位盤」のように、これら各方位が15度ずつ24程に細かく刻まれた住まいの各部位の配置の良否をチェックします。私が育った家もまさにその通りの配置となっていて、湿気の多い浴室は家の中には無く、雪が降る寒い日でも浴室やトイレに行き来するのがとても辛かったことを覚えています。

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建築家 天野 彰建築家 天野 彰

建築家 
天野 彰

岡崎市生まれ。日本大学理工学部卒。
「日本住改善委員会」を組織し「住まいと建築の健康と安全を考える会 (住・建・康の会)」など主宰。住宅や医院・老人施設などの設計監理を全国で精力的に行っている。TV・新聞・雑誌などで広く発言を行い、元通産省「産業構造審議会」や厚生労働省「大規模災害救助研究会」などの専門委員も歴任。著書には、新刊『建築家が考える「良い家相」の住まい』(講談社)、『六十歳から家を建てる』(新潮選書)『新しい二世帯「同居」住宅のつくり方』(講談社+α新書)新装版『リフォームは、まず300万円以下で』(講談社)『転ばぬ先の家づくり』(祥伝社)など多数。

 一級建築士事務所アトリエ4A代表。

 一級建築士天野 彰 公式ホームページ
 一級建築士事務所アトリエ4A ホームページ

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