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想定外の自然災害に対する安全マージンをどれだけ見積もるのか
【1】想定外の自然災害に対する安全マージンをどれだけ見積もるのか
5月6日午後0時45分頃に、茨城県つくば市の北条地区、大砂地区、ならびに筑波北部工業団地を襲った竜巻により亡くなられた方およびそのご遺族に対し深く哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心からお見舞い申しあげます。
さて、今回の被害は東日本大震災と同様に、想定外の自然災害のひとつではありますが、べた基礎の底面が地面から離れ上部構造とともに完全に裏返しになった事例や、竜巻による風圧が建築物(住宅)の耐力を上回り崩壊した事例、建築物(住宅)が道路上に移動してしまった事例。もちろん屋根ごと飛ばされたり、窓などの開口部が吹き飛ばされてしまった事例屋根ふき材や外壁材が飛ばされたり脱落した事例などもあります。
その被害は木造住宅に留まらず、鉄骨造の住宅についても同様な被害をもたらしており、屋根ごと吹き飛ばされたり骨組みが変形した事例。車庫にいたっては、柱脚ごと引き抜かれて転倒している事例もあります。
集合住宅でも、窓ガラス、サッシの枠組み、ベランダの手すりごと吹き飛ばされたり、竜巻で飛んできた屋根そのものや屋根材などが衝突して外壁や開口部が破損している事例も多数見うけられます。電柱やブロック塀、樹木の倒壊、乗用車やトラックの倒壊、乗用車が竜巻の強風により浮き上がり、屋根に落下した事例もあったそうです。いずれも住宅そのものの破損ではありませんが、もしこれらの倒壊に巻き込まれたら、まず無事で済まされないものです。
【2】気象庁 報道発表資料 平成24年5月6日ニ茨城県つくば市付近で発生した突風について
個人的になによりショックだったのが、べた基礎の底面が根こそぎ裏返しになった事例。住宅瑕疵担保責任保険の基準においては、べた基礎の形状及び配筋は構造計算による方法、べた基礎配筋表の利用、設計者の工学的判断などを利用しますが、不同沈下などについては、十分に検討を重ねて判断したとしても、建物がうける風圧は竜巻クラスの風圧を考慮していないこと。建物が受ける風圧は実はかなりありますが、私自身基礎ごと転倒する、という事例は初めて見ています。
短絡的に欠陥住宅だ!と決めつけるつもりはありませんが、個人的にはなんらかのコストダウンの影響があったのではないか?と想定しています。建てる側としても、少しでもコストは安いにこしたことはありませんが、安心・安全にかかる見えないコストへの安全マージンを、どの程度見積もっておくべきか。安全策を重視すれば、それだけ見えない部分のコストは増大していきますし、竜巻なんか来るはずないと決め込んでしまえば、それだけ見えない部分のコストは下がります。
経験がない住まい手と、経験豊富な売り手。売り手としては、経費対効果が見えにくい基礎や構造、断熱などについて、ローコストを追求すればするほど、ホンネをいえば極力お金を掛けたくないわけです。住まい手である読者のみなさまは、豪華な住宅の設備や外観だけに意識を向けるのではなく、今後、自分たちの住まいにどれだけの安全マージン(耐震性・耐風圧性など)を見積もるのか。今後は、大きな覚悟とともに、重要なテーマになってくることは間違いないと思います。
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