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雨露凌ぐ江戸の裏長屋こそ切妻の「雨傘の家」~江戸の文化に学ぶ現代の住まいと街?
雨露凌ぐ江戸の裏長屋こそ切妻の「雨傘の家」~江戸の文化に学ぶ現代の住まいと街?
■イラスト1 深川江戸資料館提供:熊さん?の江戸の裏長屋(左)、八つぁん?の長屋(右)
住まいの設計を家業としていますと世相が身に染みて分かるものです。家族や暮らしの変化もよく分かります。その意味で最近の住まいは内外ともに最悪のときではないかと思えてなりません。
もう記憶にない人も多いとも思われるオイルショックの時の不況は確かに“ショック”ではありました。が、中東情勢さえよくなればすぐに良くなる!と言った期待がありました。そして景気は一気に回復し訪れたバブル経済とその崩壊!と続くのです。
が、今の不況はまったく違っています。
そんな中で突如起こった東日本大震災を機に政権?が変わってからどん底のような不景気感からなんとなく景気回復の兆しが見えているようなムードなのですが・・・、こと住生活側から見ると根本的なことは何も変わっていません。ドル不信のせいでの円高が少しやわらぎ抑えられていた株価がちょっと上がったことに一喜一憂しながらも、一方で価額破壊や安売りの外食や衣料品が売り出されて一見良さそうと思いきや下請けいじめや国外生産などで雇用が減り、生き残りのためのリストラが急増し結局全員が苦しい結果となっているのです。
まさに“ねずみ講”の結末のように、これからくる大きな生活変化に国民の誰もが先行きの不安を感じているのです。こうなると誰もが今より良くなるという望みより、何とかやっていければ良い!的な焦燥感の中にいるのです。中でも直接打撃を受けるのが“老い”を感じ始める年齢層で、その先の老いの長さと不景気感覚が移るせいか、つつましく、彼らの次世代の若者たちまでもが意気消沈してしまっているように思えてたまりません。
今日のまでの繁栄をつくってきた中核の世代とその子ども世代がこれでは皆元気がなくなってしまいます。物に溢れしかも安くて暮らしやすい時代にもかかわらず、超高齢化社会の医療費負担、年金支給削減、介護保険料負担など、ある程度の覚悟はできて貯えてはいるものの、現実は長寿で何年生きながらえるかの予測もなく、老朽化する住まいを抱えながらも巨大地震のための耐震補強の予算などなく、ますます我慢、我慢の生活を余儀なくされているのです。
これはまさしく江戸の末期と非常に似ていると江戸文化研究に長ける人々は指摘するのです。なるほど今と昔、長寿の差はあれど、こうして皆さまの住まいを設計しながら世相の焦燥感を抱くのは私だけなのでしょうか?
しかし江戸の裏長屋に住む熊さん八つぁんは9尺二間の狭い、いや小さい住まいながらも溌剌と生きていたのです。そうです!冷房も暖房もない裏長屋で家族やりくりして“川”の字、いや“州”の字で寝ながらさらに夜なべもしながらも、翌朝になれば、「いよっ!ちっくら行っちくるは!」の熊さんの掛け声に、こんな不景気感をぶっ飛ばすようなパーッと明るい家をつくろうと改めて決意するのです。
■イラスト2:私が想像する裏長屋の家族のやりくりの生活(画:天野彰)
断熱材どころか窓もなく、切妻の雨傘のような住まいながらも、人々と息の通い合う、“いい気”の通う家、そう、元気の出る家にすることです!
★毎週土曜日 最新コラム公開中! 次回「核家族では生き残れない井戸端の裏長屋」 お楽しみに♪
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